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蒼い約束
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しおりを挟む五時限目の授業が始まってすぐにその事に気付いた秀行は、もう少しで「何考えてんだ、あいつ」と声に出してしまう処だった。しかし「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせ、まずは机の上の教科書類を片付ける。「先生」と立ち上がり、絞り出すような声を吐き出した。
「気分が悪いので、保健室に行っていいですか?」
机についた手が震えているのが自分でも判る。手だけではなく声も震えているし、演技ではなく顔も蒼白だろう。
案の定、秀行の顔色の悪さに気付いた古典の女教師は、躊躇する事なく保健室へ行く事を許可してくれた。ペコリと頭を下げた秀行は、ドアを閉めて廊下を歩き出した。
隣の教室の前を通り過ぎながら、歩調を緩める。廊下との窓が開いた教室内へと視線を向けた秀行は、「相沢」と心の中で隆哉へと呼びかけた。すぐに反応した隆哉が顔を上げ、こちらを見遣る。他の何人かの生徒達も足音に反応した為、秀行はそっと視線を逸らせた。
しかし隆哉には、これで充分だったろう。角を曲がると足を止め、壁に凭れかかる。暫くすると廊下を近寄って来る足音が聞こえて、隆哉が姿を現した。
「何?」
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2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
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