君との空へ【BL要素あり・短編おまけ完結】

Motoki

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蒼い約束

序1

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 この衝動を、どうすればいい?


 夕陽を反射するあいつの瞳に。

 只、触れたくて。

 ――あいつは。

 気付いているのだろうか。俺を映す瞳が、涙を滲ませてる事に。揺れてる事に。


 ――なんて……表情カオ、してんだ……。


 下唇を噛んでいる彬に、俊介は必死になって手を伸ばしていた。

「お前。俺を……」

 自分を責める、苦悶の表情。

 一瞬手を止めて。だが俊介は、更に手を伸ばした。


 俺は只、彬に触れたくて……。


 あの時の衝動が蘇る。只、彬に触れたかった。まだ中学生だった、あの夏の日の――。




 俊介の部屋で一緒に宿題をしていた彬の前髪を、俊介はふと気になってかき上げた。

「えっ。な、んだよ?」

 驚いた彬が顔を上げ、自分の前髪を押さえる。

「いや。邪魔じゃねぇ?」

「そうか? そーいやちょっと、伸びてきたかなぁ?」

 前髪を指先で抓みながら、彬が呟く。

「目に入んねぇ?」

「んー。たまにな」

「切っちゃえば?」
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2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
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