166 / 215
蒼い約束
序1
しおりを挟む
この衝動を、どうすればいい?
夕陽を反射するあいつの瞳に。
只、触れたくて。
――あいつは。
気付いているのだろうか。俺を映す瞳が、涙を滲ませてる事に。揺れてる事に。
――なんて……表情、してんだ……。
下唇を噛んでいる彬に、俊介は必死になって手を伸ばしていた。
「お前。俺を……」
自分を責める、苦悶の表情。
一瞬手を止めて。だが俊介は、更に手を伸ばした。
俺は只、彬に触れたくて……。
あの時の衝動が蘇る。只、彬に触れたかった。まだ中学生だった、あの夏の日の――。
俊介の部屋で一緒に宿題をしていた彬の前髪を、俊介はふと気になってかき上げた。
「えっ。な、んだよ?」
驚いた彬が顔を上げ、自分の前髪を押さえる。
「いや。邪魔じゃねぇ?」
「そうか? そーいやちょっと、伸びてきたかなぁ?」
前髪を指先で抓みながら、彬が呟く。
「目に入んねぇ?」
「んー。たまにな」
「切っちゃえば?」
夕陽を反射するあいつの瞳に。
只、触れたくて。
――あいつは。
気付いているのだろうか。俺を映す瞳が、涙を滲ませてる事に。揺れてる事に。
――なんて……表情、してんだ……。
下唇を噛んでいる彬に、俊介は必死になって手を伸ばしていた。
「お前。俺を……」
自分を責める、苦悶の表情。
一瞬手を止めて。だが俊介は、更に手を伸ばした。
俺は只、彬に触れたくて……。
あの時の衝動が蘇る。只、彬に触れたかった。まだ中学生だった、あの夏の日の――。
俊介の部屋で一緒に宿題をしていた彬の前髪を、俊介はふと気になってかき上げた。
「えっ。な、んだよ?」
驚いた彬が顔を上げ、自分の前髪を押さえる。
「いや。邪魔じゃねぇ?」
「そうか? そーいやちょっと、伸びてきたかなぁ?」
前髪を指先で抓みながら、彬が呟く。
「目に入んねぇ?」
「んー。たまにな」
「切っちゃえば?」
0
2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります》

今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
ペルシャ絨毯の模様
宮田歩
ホラー
横沢真希は、宝石商としての成功を収め、森に囲まれた美しい洋館に住んでいた。しかし、その森からやってくる蟲達を酷く嫌っていた。そんな横沢がアンティークショップで美しい模様のペルシャ絨毯を購入するが——。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる