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碧の癒し
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うえっと舌を出した彬の前で、何かを受け止めるような仕草で冬樹が体を揺らした。それを見遣った隆哉がチラリと彬に視線を戻す。そうして何かを諦めたように、ゆっくりと深い溜め息を吐いた。
「酷い事言うね、女性相手に。ちゃんと視てあげなよ、ほら。――彼女、笑ってるんだから」
「へっ?」
腕を掴まれて立ち上がる。促され前を見た彬は思わず息を呑み、呆然とした。
それは、今までに見た事もないような、神秘的な光景。
白い神官の前にいるのは、光の中で幸せそうに微笑む生前の姿のままの彼女。死装束に選んだのだろう白いワンピースは光で包まれ、碧色に輝いている。冬樹から左手の薬指に指輪を嵌めてもらうと、嬉しそうにそれを胸へと抱いた。
「ほんとだ、笑ってる」
呟いた彬に、女が顔を向ける。真っ直ぐと彬を見つめ、零れるような笑顔を見せた。
――『ありがとう』
風に乗って、彼女の声が耳に届く。それに微笑み返した彬の前で、彼女は幸せそうに姿を消していった。
「凄いでしょ」
「まあな」
「酷い事言うね、女性相手に。ちゃんと視てあげなよ、ほら。――彼女、笑ってるんだから」
「へっ?」
腕を掴まれて立ち上がる。促され前を見た彬は思わず息を呑み、呆然とした。
それは、今までに見た事もないような、神秘的な光景。
白い神官の前にいるのは、光の中で幸せそうに微笑む生前の姿のままの彼女。死装束に選んだのだろう白いワンピースは光で包まれ、碧色に輝いている。冬樹から左手の薬指に指輪を嵌めてもらうと、嬉しそうにそれを胸へと抱いた。
「ほんとだ、笑ってる」
呟いた彬に、女が顔を向ける。真っ直ぐと彬を見つめ、零れるような笑顔を見せた。
――『ありがとう』
風に乗って、彼女の声が耳に届く。それに微笑み返した彬の前で、彼女は幸せそうに姿を消していった。
「凄いでしょ」
「まあな」
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