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碧の癒し

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 言葉を途切らせた隆哉が、息をつめる。「なんだよ?」と窺う彬にポツリと呟いた。

「彼だ」

「えッ!」

 弾かれるように、隆哉が見つめる先に視線を移す。

 それは、神社の前。

 鳥居の前に立って、一人の男が石段を見上げていた。グレーの背広を着た三十代半ば程の男。その男はいつからそうしていたのか、まったく動かない。ぼんやりと只、石段の上だけを見つめていた。

「おい、あんた」

 声をかけた彬に、ビクリと男の顔が向けられる。「ちょっと話が」と言いかけた彬から逃のがれるように、男は突然背中を向けて駆け出した。

「ちょっ、なんで逃げんだよッ!」

「まあ、予想通りの反応だね。あんた、敵意剥き出し」

 のんびりと答える隆哉をギッと睨むと、彬は隆哉の腕を掴んで走り出した。

「なぁに! 逃げるなら追いかけるまでだッ」

「……それで。なんで俺も一緒? あんた一人の方が速いでしょ」

「うっせぇ! 『連帯責任』っつーヤツだよ」

「何? あんた、何する気なの?」

「それはな、あいつ次第だ」
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