君との空へ【BL要素あり・短編おまけ完結】

Motoki

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碧の癒し

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 それは、あのカード。銀色の髪に白いドレスを纏った、やさしく微笑む姫様の描かれたカードだった。彼女の手を離れたカードは看護師の手を経て、祖母へと返されたのだ。――あの時祖母はなんと言っていた? 



『あの子もねぇ、ひぃちゃんと友達になりたいって言っていたよ』



 そう言ったのではなかったか?

「クソッ」

 吐き捨てるように呟いた秀行は、両手に拳を握り顔を埋めた。



『本当に死んだ女友達なんていないんだ』

『俺がそんな叶いもしない約束をするとも思えないな』



 なんて酷い――俺は、なんて言葉を言ってしまったんだろう! もう何度、そんな女の子は『いない』と口に出してしまった事か。

 ずっとそれを、あの子は聞いていたんだ。自分の後ろで。

 彼女はなんと思っただろう。その言葉を聞く度に、自分の存在を否定する、その台詞に……。

 何が、記憶力には自信があるだ。とんだ馬鹿野郎じゃないか!

 ダンと拳を畳にぶつけた秀行は、勢いよく顔を上げた。



 ――探さないと。



 ある筈だ。彼女が『いた』という証拠が。俺達が『友達』だという『しるし』が。俺が受け取ったんだから、彼女の分身であるあのカードを。

「待ってろよ。必ず見つけるから」

 膝に手をあて立ち上がる。きつく目を見開いた秀行は、廊下に続く襖を開けた。




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2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
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