138 / 215
碧の癒し
30
しおりを挟む
悲しみに顔を歪ませる彬の前に、隆哉が立った。夕陽の光を受けた硝子の瞳が、無表情に彬を見下ろす。
「高橋、もう止めろ」
「うっせぇ! なんで、なんでだッ! こんな、勝手に死んだ奴に周りが振り回されて、冬樹さんだって、命削ってまで救ってやろうとしてッ。こんな、奴に――」
「高橋」
隆哉が遮るように出した腕を掴んで、彬は更に身を乗り出した。
「言っとくけどなぁ! 死んで満足してねぇなら、お前の『死』なんてのはなんの意味もねぇ。『無駄死に』だよッ!」
「高…は、し――」
「えっ?」
彬が掴む腕だけを残して、隆哉の膝がカクリと落とされた。それを驚愕と共に見下ろす彬の耳に、『ポトリ』と何かが地面へと落ちる音が届く。
それは確かに、何か小さな物が地面へと落ちた音。しかし反射的に向けた目には、何も映らなかった。その地面の丁度上の空間にある、ぶら下がった女の足以外は――。
白いパンプスが履かれた足をゆっくりと上へと辿ってゆく。そこには只、黒い瞳があった。
「高橋、もう止めろ」
「うっせぇ! なんで、なんでだッ! こんな、勝手に死んだ奴に周りが振り回されて、冬樹さんだって、命削ってまで救ってやろうとしてッ。こんな、奴に――」
「高橋」
隆哉が遮るように出した腕を掴んで、彬は更に身を乗り出した。
「言っとくけどなぁ! 死んで満足してねぇなら、お前の『死』なんてのはなんの意味もねぇ。『無駄死に』だよッ!」
「高…は、し――」
「えっ?」
彬が掴む腕だけを残して、隆哉の膝がカクリと落とされた。それを驚愕と共に見下ろす彬の耳に、『ポトリ』と何かが地面へと落ちる音が届く。
それは確かに、何か小さな物が地面へと落ちた音。しかし反射的に向けた目には、何も映らなかった。その地面の丁度上の空間にある、ぶら下がった女の足以外は――。
白いパンプスが履かれた足をゆっくりと上へと辿ってゆく。そこには只、黒い瞳があった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ラヴィ
山根利広
ホラー
男子高校生が不審死を遂げた。
現場から同じクラスの女子生徒のものと思しきペンが見つかる。
そして、解剖中の男子の遺体が突如消失してしまう。
捜査官の遠井マリナは、この事件の現場検証を行う中、奇妙な点に気づく。
「七年前にわたしが体験した出来事と酷似している——」
マリナは、まるで過去をなぞらえたような一連の展開に違和感を覚える。
そして、七年前同じように死んだクラスメイトの存在を思い出す。
だがそれは、連環する狂気の一端にすぎなかった……。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
二月のお祀り
六道イオリ/剣崎月
ホラー
「ごめん!いま地獄にいて、お祀りに間に合いそうにないから、今回だけ頼みます!」
参考サイト
警視庁Webサイト:https://www.npa.go.jp/index.html
裁判所:https://www.courts.go.jp/index.html
内閣府:https://www.cao.go.jp/
熊谷さとるのホームページ【移転版】:https://dusklog.fc2.net/
クトゥルーの復活、その他の物語
綾野祐介
ホラー
全ての行動には意味がある、あまりにも恐ろしい意味が。
日本、世界で始まる旧支配者たちの復活。
若しくは封印を解かれようとする旧支配者たち。
交差する思惑、暗躍する漆黒の影。
立ち向かおうとする人間はあまりにも非力である。
これは、そんな非力な人類が強大な力に出来得るかぎ限り抗おうとする物語。
抗う先にあるものは希望か、絶望か。
人類の存亡をかけた戦いの中に、あなたは何を感じるのだろうか。
愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか
風見ゆうみ
恋愛
「君のことは大好きだけど、そういうことをしたいとは思えないんだ」
初夜の晩、爵位を継いで伯爵になったばかりの夫、ロン様は私を寝室に置いて自分の部屋に戻っていった。
肉体的に結ばれることがないまま、3ヶ月が過ぎた頃、彼は私の妹を連れてきて言った。
「シェリル、落ち着いて聞いてほしい。ミシェルたちも僕たちと同じ状況らしいんだ。だから、夜だけパートナーを交換しないか?」
「お姉様が生んだ子供をわたしが育てて、わたしが生んだ子供をお姉様が育てれば血筋は途切れないわ」
そんな提案をされた私は、その場で離婚を申し出た。
でも、夫は絶対に別れたくないと離婚を拒み、両親や義両親も夫の味方だった。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる