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碧の癒し

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「それでもいいんだ!」

 グッと拳を握り宣言し、今回は「それに」と付け加える。

「聴き方によっては、少しは違う事言うかもしんねぇし」

「――あのね。言っておくけど、時任は特別だよ」

「は?」

 石段から足を離して彬に向き直った隆哉は、呆れたように上目遣いに彬を見遣って腕を組んだ。

「死んだ人間。特に何かしらの強い執着を持ってこっちに留まってる霊とは、まともに会話なんて出来やしないよ。それは年月を重ねれば重ねる程、難しくなる。向こうは言いたい事だけを言ってくるし、こっちが何を聴いても答えようともしない。その執着だけに支配されていくようになる。『人』だったという意識も薄れ、人ではない別の『存在』。言葉すらも通じない、『壊れた古いレコード』のように同じ言葉フレーズだけを繰り返す、そんな存在へと変貌していくんだ。

 勿論、あの子はまだそこまでにはなってないけど、自分の名前すら答えない。時任のように普通に会話したり、笑ったりなんてのは、その執着を取り除くまでは絶対無理。つまり大下自身に彼女を思い出させて、その『友達のしるし』が何だったのかを突き止めるまでは、最低でもね。彼女もそれを望んでる。他の人間なんてお呼びじゃない」
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