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碧の癒し

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 しかし、その存在に気づき足を踏み入れようとすれば、足が竦む程の威圧感を与える。立ち入ろうとする者を見定め、認められた者だけが、この場所に入る事を許される。そんな感じだった。

 ジッと石段を見上げたままで立ち尽くす彬を置いて、隣の男が無遠慮に石段へと足を踏み出す。

「ちょっ…、相沢ぁ!」

 叫ぶように言った彬の声に、上半身だけがゆっくりと振り返る。虚ろな瞳で彬を見返すと、「何?」と首を傾げた。

「お前の寄るトコって、ここ……なのかよ?」

 何を今更、とでも返ってきそうな場面。しかし隆哉は、彬の心を見透かすように低い声で応じただけだった。

「だから、来なくていいって言ったのに」

 吐息混じりの台詞に、彬がフンと鼻を鳴らす。

「んな訳にいくか! 俺はあの子の声を聴くコツを、教えてもらわなきゃなんねぇんだからよッ」

「直接聴いても、一緒だよ。俺がさっき言った以上の事は答えないから」

 先程から何度も聞かされている台詞。一度は「一緒に来る?」と言っておきながら、少女の烙印を受け、依憑いひょうを聴いてからは「来なくていい」とその態度を一変していた。それでも彬は諦めず、その都度同じ切り返しを続けている。
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