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碧の癒し

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 足を止めた彬は、目の前にある石段を見上げ「ほえー」と気の抜けた声を出した。暫しの間、呆然とする。

「何ここ。――神社?」

 石段の手前に鳥居があるのだから、神社には違いない。石段から続く鎮守の森も、鳥居の脇の狛犬も、それを如実に示していた。

「でけッ!」

 その上、狛犬が異様にデカイ。自分と同じ背丈程もある狛犬が、鳥居を挟み込むように両側に座り、顔だけをこちらに向けている。その顔がまるで、自分を拒むかのように威嚇していた。  

 実際には石で出来ているのだから、威嚇している筈はない。しかし軽い気持ちで入るのが躊躇ためらわれる程、その狛犬からは重い空気が流れ出ていた。

 そもそもこんな所に、神社があるなんて彬は知らなかった。学校を挟んで自分の家とは逆方向なのだから、知らなくても別段不思議はない。――が、例えこの辺りを頻繁に通る人であっても、つい見逃してしまうのではないか。そう思える程、その神社は存在感が希薄だった。

 それはこの場所に馴染んでいる為というよりは、空間が遮断されているような……。まるで異空間にあってここには存在していない、そんな印象を与えた。
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