109 / 215
碧の癒し
1
しおりを挟む
足を止めた彬は、目の前にある石段を見上げ「ほえー」と気の抜けた声を出した。暫しの間、呆然とする。
「何ここ。――神社?」
石段の手前に鳥居があるのだから、神社には違いない。石段から続く鎮守の森も、鳥居の脇の狛犬も、それを如実に示していた。
「でけッ!」
その上、狛犬が異様にデカイ。自分と同じ背丈程もある狛犬が、鳥居を挟み込むように両側に座り、顔だけをこちらに向けている。その顔がまるで、自分を拒むかのように威嚇していた。
実際には石で出来ているのだから、威嚇している筈はない。しかし軽い気持ちで入るのが躊躇われる程、その狛犬からは重い空気が流れ出ていた。
そもそもこんな所に、神社があるなんて彬は知らなかった。学校を挟んで自分の家とは逆方向なのだから、知らなくても別段不思議はない。――が、例えこの辺りを頻繁に通る人であっても、つい見逃してしまうのではないか。そう思える程、その神社は存在感が希薄だった。
それはこの場所に馴染んでいる為というよりは、空間が遮断されているような……。まるで異空間にあってここには存在していない、そんな印象を与えた。
「何ここ。――神社?」
石段の手前に鳥居があるのだから、神社には違いない。石段から続く鎮守の森も、鳥居の脇の狛犬も、それを如実に示していた。
「でけッ!」
その上、狛犬が異様にデカイ。自分と同じ背丈程もある狛犬が、鳥居を挟み込むように両側に座り、顔だけをこちらに向けている。その顔がまるで、自分を拒むかのように威嚇していた。
実際には石で出来ているのだから、威嚇している筈はない。しかし軽い気持ちで入るのが躊躇われる程、その狛犬からは重い空気が流れ出ていた。
そもそもこんな所に、神社があるなんて彬は知らなかった。学校を挟んで自分の家とは逆方向なのだから、知らなくても別段不思議はない。――が、例えこの辺りを頻繁に通る人であっても、つい見逃してしまうのではないか。そう思える程、その神社は存在感が希薄だった。
それはこの場所に馴染んでいる為というよりは、空間が遮断されているような……。まるで異空間にあってここには存在していない、そんな印象を与えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
子籠もり
柚木崎 史乃
ホラー
長い間疎遠になっていた田舎の祖母から、突然連絡があった。
なんでも、祖父が亡くなったらしい。
私は、自分の故郷が嫌いだった。というのも、そこでは未だに「身籠った村の女を出産が終わるまでの間、神社に軟禁しておく」という奇妙な風習が残っているからだ。
おじいちゃん子だった私は、葬儀に参列するために仕方なく帰省した。
けれど、久々に会った祖母や従兄はどうも様子がおかしい。
奇妙な風習に囚われた村で、私が見たものは──。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
闇夜に道連れ ~友哉とあきらの異常な日常~
緋川真望
ホラー
少しだけ歪んでいたとしても、そばにいるだけで、きっと幸せ。
盲目で何も見えないはずの友哉の目には、怪異が映る。
半妖のあきらの目にも、怪異が映る。
でも、二人に見えているものは同じではなかった。
盲目の友哉と半妖のあきらは便利屋をしながら各地を転々として暮らしている。
今回依頼があったのは築三年の新しいアパートで、事故物件でもないのに、すでに6人も行方不明者が出ているという。
アパートを訪れたふたりはさっそく怪異に巻き込まれてしまい……。
序章は現代(19歳)、第一章から第七章まで二人の高校時代のお話(友哉の目が見えなくなる原因など)、終章はまた現代に戻る構成です。
ホラーみのあるブロマンスです。
エロはありません。
エブリスタでも公開中。
【完結】日成らず君となる
セイヂ・カグラ
BL
菊川灯治は無口な人間だった。
高校ニ年生の秋、1年上の先輩のバイクに乗った。先輩は推薦合格で都会の大学に行くらしい。だから最後の思い出作り。やけに暑い秋だった。
メリバBLです。
霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー
柿村 呼波
ホラー
海岡高等学校軽音楽部に所属する九条遙加はふとしたことから自分が霊媒体質であることを知ってしまった。
『18歳までに霊に関する体験をしなければ、霊感に目覚めることはない』
そんな言葉を信じて16歳も半分を過ぎた頃それは起こった。
これは怖いことやお化け屋敷が大嫌いなのに、霊媒体質である九条遙加が出会うちょっと不思議で、時には薄ら寒い思いをするそんな物語である。
※この物語に登場する人物・団体・名称・出来事等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
別サイトにも投稿しています。
桜吹雪と泡沫の君
叶けい
BL
4月から新社会人として働き始めた名木透人は、高校時代から付き合っている年上の高校教師、宮城慶一と同棲して5年目。すっかりお互いが空気の様な存在で、恋人同士としてのときめきはなくなっていた。
慣れない会社勤めでてんてこ舞いになっている透人に、会社の先輩・渡辺裕斗が合コン参加を持ちかける。断り切れず合コンに出席した透人。そこで知り合った、桜色の髪の青年・桃瀬朔也と運命的な恋に落ちる。
だが朔也は、心臓に重い病気を抱えていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる