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白い影

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 どうして、あんなに必死になるんだ?

 その子がずっと自分に憑いているにしても、今までなんの悪影響もなかったのだ。自分を特別な友達と思い込んで憑いているのなら、それでも構わない。好きなようにさせてやるだけだ。

 よくテレビなどで言っているような、自分の身辺で悪い事が起こるなどという事も……。

「あれ?」

 ピタリと足を止めた秀行は、「ちょっと待てよ」と眉間に皺を寄せた。そういえば、高橋はあの時なんて言ってた?


 ――『じゃあさ、今までの友達で死んだヤツは? 勿論、男も含めて』


 あれは、どういう意味だ? 何故あの場面で、あの台詞?

 ゆっくりと視線を泳がせた秀行は、思い当たった考えに「チッ」と舌打ちした。強く確信して、勢いよく走り出す。

「あのバカ。一番肝心な事を言わないで!」

 唸るように言葉を吐き出した秀行は、グッとカバンを握る手に力を入れた。

 急いで靴を履き替え、玄関から外へと飛び出す。左右に素早く走らせた目線が、先を行く二人を捕え、そしてそのまま凍りついた。

「うそっ…だろぉ……」

 声が、震える。

 二人の後ろ姿。隆哉に向けられた彬の横顔が、血に染まっている。血に濡れた死体が、じゃれ合うように、隣の男に拳を繰り出していた。

 目の前に広がる信じられない光景に、秀行は暫く呆然と、只その場に立ち尽くしていた。





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