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白い影
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「幼い魂であっても、人を殺す程となるとそこには悪意が生じてくる。それは『可愛い嫉妬』では済ませられない。れっきとした悪霊だ。子供だから、何をしてもいいって解釈は出来ないよ。あんたと違って俺はね」
最後の言葉に、ピクリと彬の眉が引き上げられる。唇を尖らすようにして隆哉の顔を見下ろしていた彬は、体の力を抜くように、溜め息と共に微笑を浮かべた。
「何、急に怒りだしてんだよ。お前」
宥めるように問いかけられて、今度は隆哉が目を瞠った。もしかすると、自分が怒っていたという自覚すらもなかったのかもしれない。
「別に」
目を伏せ、ボソリと呟く。短く息を吐き出した隆哉は、もう一度彬を見上げた。
「これだけは言っておくけど。大下、いや、あの子に肩入れするつもりなら、あんたが死ぬまでになんとかする事だね。もしあんたが死んだら、俺があの子の魂を消滅させる。それが嫌なら、大下には近付かない事だ」
――けっこう、頑固だな。
自分の事は棚に上げ、彬は心の中で呟いた。でも、こういう性格は嫌いじゃない。
隆哉から顔を背け、ガリガリと頭を掻いた。
最後の言葉に、ピクリと彬の眉が引き上げられる。唇を尖らすようにして隆哉の顔を見下ろしていた彬は、体の力を抜くように、溜め息と共に微笑を浮かべた。
「何、急に怒りだしてんだよ。お前」
宥めるように問いかけられて、今度は隆哉が目を瞠った。もしかすると、自分が怒っていたという自覚すらもなかったのかもしれない。
「別に」
目を伏せ、ボソリと呟く。短く息を吐き出した隆哉は、もう一度彬を見上げた。
「これだけは言っておくけど。大下、いや、あの子に肩入れするつもりなら、あんたが死ぬまでになんとかする事だね。もしあんたが死んだら、俺があの子の魂を消滅させる。それが嫌なら、大下には近付かない事だ」
――けっこう、頑固だな。
自分の事は棚に上げ、彬は心の中で呟いた。でも、こういう性格は嫌いじゃない。
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