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緋い記憶

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「只、そうだな。気休めになるかどーか知らねぇが、あいつのあの態度、予想通りだよ。あの時、下唇噛んでただろ? あれはな、言いたい事があるのに言えない時、あいつが見せる癖なんだ。それも、自分を責めてる時特有のな。あの癖を見せられちゃ、許すしかねぇよなぁ。

ちなみに歯を食いしばりながら黙り込む時は要注意だぜ。その後、噛み付かんばかりに吠え立ててくる。憶えといて、損はないぞ」

 ぼんやりと膝に肘をついて顎を支えた隆哉は、どーでもいい事だと等閑に頷いてみせた。

「憶えといてもいいけど。どうせあんたの依憑を叶えるまでの短い付き合いだしね。役に立つとも思えない」

 おや、と一瞬意外そうな瞳を隆哉に向けて、俊介はククッと笑いを洩らした。

「そうか。ならいいや。俺が言いたいのは、お前がもし普段通りのリアクションをしてたなら、きっと彼女にはお前の気持ち、伝わってるって事だ」

「……そう…かな」

「ああ、勿論だ。それに死んだヤツにとっては、『誰の所為で』なんて大した問題じゃねーんだぜ。だって、既に死んじまってんだからな。そんな事よりもっと、大事な事があるんだ。死人おれたちには、死人なりのな」
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