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緋い記憶

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 自分でも声が掠れているのが判る。一途な想いに感動する半面、『あいつが迎えに来てくれる瞬間だけを待ってる』という言葉には、心底戦慄を覚えた。


『俺ならあいつを拒絶なんてしない』


 そう言外に言われている気がして、心に痛みを覚えずにはいられなかった。

 そんな彬を窺い見た隆哉が、目を細める。その顔は、笑っているように見えた。

「これは少し、おしゃべりが過ぎたみたいだ。俺が言いたいのは、不思議だなと思ったんだ。さっきあんたが時任を蹴り飛ばした時、甦ったから。少しの間だったけど」

「何が?」

「俺の、心」

「え?」

 訊き返す彬を見る隆哉の瞳は、相変わらず感情を映していない。黒い硝子玉のまま、淡く彬を映していた。

「俺が言ってるのは、表現としての言葉じゃない。俺は本当に、『心』を遺してきたんだから。なのに、何故なんだろう? あの日以来、こんな事なかったのに。何を言われても、目の前で何が起こっても、何も感じなかった筈なのに……。半分死んでる、俺の心は」

 言葉と共に心臓に手をあて、そっと拳を握る。
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