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緋い記憶
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「中々シュールだろ?」
隆哉の言葉になんと答えていいか判らず、彬は只隆哉の顔を見つめた。一瞬自嘲的な笑みが浮かんだように見えた顔が、虚ろな瞳で彬を見つめ返す。
「それからだよ。死んだ人間の姿が、そこ此処に視えるようになったのは。それも性質の悪い事に、生きてる人間と変わりなく視えるんだ。彼等は、何かしらの理由があってこちらに留まっている。それを為すまで、あの世へは逝けない。だから、俺にそれを託す。自分達では出来ない事も多いから。依憑の証として、この痣のように彼等は俺に烙印を押すんだ。その願いが成されるまで、この印は消えない」
左の太腿を擦った隆哉は、そのまま俯いた。
「時任の願いは、最期の瞬間に抱いた疑問。『何故傍に来てくれないんだ?』という事の答えをみつける事だった。時任はその最後の思いに縛られて、あの場所から一歩も動く事が出来ないでいる。だから、相手に直接答えてもらうのが一番だと思ったんだけど。これが中々手強くてね。上手くいかなかった」
「ハハ…。そうか?」
隆哉の言葉になんと答えていいか判らず、彬は只隆哉の顔を見つめた。一瞬自嘲的な笑みが浮かんだように見えた顔が、虚ろな瞳で彬を見つめ返す。
「それからだよ。死んだ人間の姿が、そこ此処に視えるようになったのは。それも性質の悪い事に、生きてる人間と変わりなく視えるんだ。彼等は、何かしらの理由があってこちらに留まっている。それを為すまで、あの世へは逝けない。だから、俺にそれを託す。自分達では出来ない事も多いから。依憑の証として、この痣のように彼等は俺に烙印を押すんだ。その願いが成されるまで、この印は消えない」
左の太腿を擦った隆哉は、そのまま俯いた。
「時任の願いは、最期の瞬間に抱いた疑問。『何故傍に来てくれないんだ?』という事の答えをみつける事だった。時任はその最後の思いに縛られて、あの場所から一歩も動く事が出来ないでいる。だから、相手に直接答えてもらうのが一番だと思ったんだけど。これが中々手強くてね。上手くいかなかった」
「ハハ…。そうか?」
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