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緋い記憶
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話の内容の割に淡々と話す隆哉に、探るような彬の視線が向けられる。言葉とは裏腹の、無表情な男の横顔を見つめていた。
「真意ったって。そりゃあ、お前を助けたかったんだろうよ」
「……そう思う?」
「え?」
改めて問われても困る。戸惑った様子で少し身を引いた彬は、怪訝な瞳を隆哉に向けた。
「だって現に、お前だけが助かったんだろ? ――違うのか?」
顔は真っ直ぐ夕陽に向けたまま、隆哉がチロリと目の端で彬を捉える。そうしてゆっくりと瞼を閉じた隆哉は、首を傾げてみせた。
「結果を言えばね、確かにそうだよ。でも、判らないだろ? あいつの心の中なんて。あいつはあの日、俺と一緒にいなければ死ぬ事もなかったんだ。だからあいつは、俺を恨んでいるのかもしれない。もしかしたら、俺をあの崖から落とせば自分は助かると思っていたのかもしれない。俺が憎くてあんな事をしたのかもしれない。――そうは思わない?」
「……そんな、虚しくなるような事。言うなよ」
俊介の気持ちを、言われてるみたいだ。
沈鬱な表情を浮かべた彬は、ブランコの鎖にしがみ付くように腕をまわした。
「真意ったって。そりゃあ、お前を助けたかったんだろうよ」
「……そう思う?」
「え?」
改めて問われても困る。戸惑った様子で少し身を引いた彬は、怪訝な瞳を隆哉に向けた。
「だって現に、お前だけが助かったんだろ? ――違うのか?」
顔は真っ直ぐ夕陽に向けたまま、隆哉がチロリと目の端で彬を捉える。そうしてゆっくりと瞼を閉じた隆哉は、首を傾げてみせた。
「結果を言えばね、確かにそうだよ。でも、判らないだろ? あいつの心の中なんて。あいつはあの日、俺と一緒にいなければ死ぬ事もなかったんだ。だからあいつは、俺を恨んでいるのかもしれない。もしかしたら、俺をあの崖から落とせば自分は助かると思っていたのかもしれない。俺が憎くてあんな事をしたのかもしれない。――そうは思わない?」
「……そんな、虚しくなるような事。言うなよ」
俊介の気持ちを、言われてるみたいだ。
沈鬱な表情を浮かべた彬は、ブランコの鎖にしがみ付くように腕をまわした。
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2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
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