31 / 215
緋い記憶
31
しおりを挟む
「それじゃ、って。そんだけか? 俺一人こんなトコに残して、どーすんだよ」
「一人? 違うよ。視えるでしょ」
チョイチョイと地面を指差す隆哉に、一瞬視線を落とした彬が眉間に皺を寄せ、首を振る。
「いんや。なんも見えねぇ」
そこは確かに俊介が倒れていた場所。だが、今も何が残っているという訳でもない。
あの時俊介の血が流れて辺りを緋く染めた――今となっては、只それだけの場所であった。
「視ようと思わないから、視えないんだよ」
「ちょっ…と、待てって!」
歩き出した隆哉を慌てて追いかける。その肩に手をかけた途端、何かに足を取られてガクリと膝をついた。
「いってェ!」
咄嗟に両手を地面についた彬が、尻餅をつくようにして体を捻る。何が引っ掛かったのかと、自分の足元へと視線を落とした。
「……ヒッ…!」
その足首を掴むモノを見下ろして、彬は小さく悲鳴をあげた。
「……俊…す……!」
掠れて、声が出ない。
彬の足首を掴んでいたのは、血に塗れた手。――俊介の手だった。
「一人? 違うよ。視えるでしょ」
チョイチョイと地面を指差す隆哉に、一瞬視線を落とした彬が眉間に皺を寄せ、首を振る。
「いんや。なんも見えねぇ」
そこは確かに俊介が倒れていた場所。だが、今も何が残っているという訳でもない。
あの時俊介の血が流れて辺りを緋く染めた――今となっては、只それだけの場所であった。
「視ようと思わないから、視えないんだよ」
「ちょっ…と、待てって!」
歩き出した隆哉を慌てて追いかける。その肩に手をかけた途端、何かに足を取られてガクリと膝をついた。
「いってェ!」
咄嗟に両手を地面についた彬が、尻餅をつくようにして体を捻る。何が引っ掛かったのかと、自分の足元へと視線を落とした。
「……ヒッ…!」
その足首を掴むモノを見下ろして、彬は小さく悲鳴をあげた。
「……俊…す……!」
掠れて、声が出ない。
彬の足首を掴んでいたのは、血に塗れた手。――俊介の手だった。
0
2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
叔父様ノ覚エ書
国府知里
ホラー
音信不通になっていた叔父が残したノートを見つけた姪。書かれていたのは、摩訶不思議な四つの奇譚。咲くはずのない桜、人食い鬼の襲撃、幽霊との交流、三途の川……。読むにつれ、叔父の死への疑いが高まり、少女は身一つで駆けだした。愛する人を取り戻すために……。
「行方不明の叔父様が殺されました。お可哀想な叔父様、待っていてね。私がきっと救ってあげる……!」
~大正奇奇怪怪幻想ホラー&少女の純愛サクリファイス~
推奨画面設定(スマホご利用の場合)
背景色は『黒』、文字フォントは『明朝』
不動の焔
桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。
「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。
しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。
今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。
過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。
高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。
千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。
本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない
──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。

最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
二人称・短編ホラー小説集 『あなた』
シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』
そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。
様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。
小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。

今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる