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緋い記憶
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「それじゃ、って。そんだけか? 俺一人こんなトコに残して、どーすんだよ」
「一人? 違うよ。視えるでしょ」
チョイチョイと地面を指差す隆哉に、一瞬視線を落とした彬が眉間に皺を寄せ、首を振る。
「いんや。なんも見えねぇ」
そこは確かに俊介が倒れていた場所。だが、今も何が残っているという訳でもない。
あの時俊介の血が流れて辺りを緋く染めた――今となっては、只それだけの場所であった。
「視ようと思わないから、視えないんだよ」
「ちょっ…と、待てって!」
歩き出した隆哉を慌てて追いかける。その肩に手をかけた途端、何かに足を取られてガクリと膝をついた。
「いってェ!」
咄嗟に両手を地面についた彬が、尻餅をつくようにして体を捻る。何が引っ掛かったのかと、自分の足元へと視線を落とした。
「……ヒッ…!」
その足首を掴むモノを見下ろして、彬は小さく悲鳴をあげた。
「……俊…す……!」
掠れて、声が出ない。
彬の足首を掴んでいたのは、血に塗れた手。――俊介の手だった。
「一人? 違うよ。視えるでしょ」
チョイチョイと地面を指差す隆哉に、一瞬視線を落とした彬が眉間に皺を寄せ、首を振る。
「いんや。なんも見えねぇ」
そこは確かに俊介が倒れていた場所。だが、今も何が残っているという訳でもない。
あの時俊介の血が流れて辺りを緋く染めた――今となっては、只それだけの場所であった。
「視ようと思わないから、視えないんだよ」
「ちょっ…と、待てって!」
歩き出した隆哉を慌てて追いかける。その肩に手をかけた途端、何かに足を取られてガクリと膝をついた。
「いってェ!」
咄嗟に両手を地面についた彬が、尻餅をつくようにして体を捻る。何が引っ掛かったのかと、自分の足元へと視線を落とした。
「……ヒッ…!」
その足首を掴むモノを見下ろして、彬は小さく悲鳴をあげた。
「……俊…す……!」
掠れて、声が出ない。
彬の足首を掴んでいたのは、血に塗れた手。――俊介の手だった。
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