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緋い記憶

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 何度も躓き、つんのめりながら腕を引っ張られていた彬は、公園の前の道路に出た途端に足を止めた。

 あの時と同じ真っか緋な夕陽。周りに誰もいない光景は、あの時にタイムスリップしたような錯覚を起こさせた。

 ――だが俺の隣にいるのは、俊介じゃないんだ。

 立ち尽くす彬の腕を放した隆哉は、ゆっくりと足を進めて立ち止まった。

 その場所で膝を付き、誰かに話しかけるように声を出す。

「手っ取り早そうだったから、連れて来た」

 あたかもそこに人がいるとでも言いたげに、何も無い場所を見つめる。

 ――あの、場所……。

 そこは、『あの場所』だった。――俊介が弾き飛ばされた場所。

 俺の名を呼びながら、ずっと待っていた場所だ。

「悪い……ジョーダンかよ」

 その場所を凝視する彬の唇が、皮肉げに歪む。本人はなんとか笑みを作っているつもりだったが、それを笑みと呼ぶにはあまりにも引きつりすぎていた。

「しっかりね」

 彬の顔を見遣ってそれだけ言うと、隆哉は立ち上がり背を向けた。

「それじゃ」
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