25 / 215
緋い記憶
25
しおりを挟む
「なあ、これを一緒に帰ってるって言うんだろうかな?」
少し前をのんびりと歩く隆哉に、彬は顔を背けながら問いかけた。先程から会話もなければ振り返る事もしない。そもそも家に近付いているのかさえ、怪しかった。
「帰るってのは、帰宅するって意味だよな? 俺んち、こっち方面じゃないんだけど」
更に返事のない隆哉に、彬はフンと鼻を鳴らしてみせた。
「楽しくもない散歩を、面白くもない相手とするつもりはないんですがね」
ここまで無反応を貫かれると、嫌味の一つも言ってみたくなる。その言葉に足を止め微かに振り返った隆哉は、のんびりと答えた。
「ああ、大丈夫。俺の家は、こっち方面だから」
「ほぉ。それって何かなぁ? もしかして、俺に家まで送れと言っているのかなぁ?」
おどけたように言葉を繰り出すが、彬の瞳は少しも笑っていない。
眩しさを増した夕陽を背に受ける隆哉を真っ直ぐ見据えたまま、探るように彬は言葉を付け足した。
「それとも、家に寄っていけと言いたいのか?」
――それで、謎が解けるってのか?
少し前をのんびりと歩く隆哉に、彬は顔を背けながら問いかけた。先程から会話もなければ振り返る事もしない。そもそも家に近付いているのかさえ、怪しかった。
「帰るってのは、帰宅するって意味だよな? 俺んち、こっち方面じゃないんだけど」
更に返事のない隆哉に、彬はフンと鼻を鳴らしてみせた。
「楽しくもない散歩を、面白くもない相手とするつもりはないんですがね」
ここまで無反応を貫かれると、嫌味の一つも言ってみたくなる。その言葉に足を止め微かに振り返った隆哉は、のんびりと答えた。
「ああ、大丈夫。俺の家は、こっち方面だから」
「ほぉ。それって何かなぁ? もしかして、俺に家まで送れと言っているのかなぁ?」
おどけたように言葉を繰り出すが、彬の瞳は少しも笑っていない。
眩しさを増した夕陽を背に受ける隆哉を真っ直ぐ見据えたまま、探るように彬は言葉を付け足した。
「それとも、家に寄っていけと言いたいのか?」
――それで、謎が解けるってのか?
0
2019.2.13 オリジナルBL小説『日常』もサイトで更新しました。ほのぼのBLです。こちらの方もよろしくお願いします。https://rhapsodos-atar.jimdo.com/
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
看取り人
織部
ライト文芸
宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。
後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。
そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。
「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」
これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し
優しい鎮魂
天汐香弓
キャラ文芸
両親に虐げられネグレクト環境で育った不破新は祖父母の力を借り進学した先のアパートで不思議な力に目覚める。幽霊と会話し、成仏させることの出来る力だ。その力で毎夜幽霊と語らう新は力の存在に気づいた本家に引き取られることになった。本家は除霊で有名な神社で、その跡取りになった新は仲良くなった弁護士秋月と共にとある事件をきっかけに魂を救う旅に出る。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
【厳選】意味怖・呟怖
ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。
※考察大歓迎です✨
※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。


『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら
黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。
最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。
けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。
そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。
極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。
それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。
辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの?
戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる?
※曖昧設定。
※別サイトにも掲載。


怪談収集家は探偵じゃありません! 戸羽 心里はホンモノに会いたい──《ひもろきサマ》
牛丸 ちよ
ホラー
怪談収集家のトンチキ女子大生・戸羽心里は全国に散る「塩に関する怪談」に興味を持つ。
《ひろきくんにノックされると不幸になる盛り塩団地》──SNSで知り合った「祟られた人」の部屋へ泊まりに行くと、説明のつかない恐怖体験に襲われる。
そのころ、心里の下宿先の大家であり和装ナイスミドルな作家・下哭善太郎は《塩に邪気を封じる巫女》を取材し、奇跡を目の当たりにしていた。
合流した二人は、好奇心から類似性のあるオカルトスポット巡りを始める。
《富弥町の盛り塩禁止アパート》
《学校七不思議・雪の日の花子さん》
《牛鬼と塩の奇祭があるひもろきの村》
《玄関外の盛り塩が途切れない廃屋》
──そんな中で、「私がつぐなう」という遺書と、首吊り死体を見つけてしまう。
怪談をたどるほど物語は【現在】に収束し、本物の怪異と人間の悪意とが交差する。
(オカルト要素メインのサイコライトミステリ)
(恋愛要素なし)
(謎の投げっぱなしは極力しない系)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる