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緋い記憶

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「なあ、これを一緒に帰ってるって言うんだろうかな?」

 少し前をのんびりと歩く隆哉に、彬は顔を背けながら問いかけた。先程から会話もなければ振り返る事もしない。そもそも家に近付いているのかさえ、怪しかった。

「帰るってのは、帰宅するって意味だよな? 俺んち、こっち方面じゃないんだけど」

 更に返事のない隆哉に、彬はフンと鼻を鳴らしてみせた。

「楽しくもない散歩を、面白くもない相手とするつもりはないんですがね」

 ここまで無反応を貫かれると、嫌味の一つも言ってみたくなる。その言葉に足を止め微かに振り返った隆哉は、のんびりと答えた。

「ああ、大丈夫。俺の家は、こっち方面だから」

「ほぉ。それって何かなぁ? もしかして、俺に家まで送れと言っているのかなぁ?」

 おどけたように言葉を繰り出すが、彬の瞳は少しも笑っていない。

 眩しさを増した夕陽を背に受ける隆哉を真っ直ぐ見据えたまま、探るように彬は言葉を付け足した。

「それとも、家に寄っていけと言いたいのか?」

 ――それで、謎が解けるってのか?
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