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緋い記憶
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ボソリと呟かれた隆哉の言葉に、跳ねるように彬が体を塀から剥がす。
「そりゃ、こっちの台詞だよ! ってか、昨日もお前、変な事言っただろうが! なんだありゃあ!」
隆哉の顔を指差し、捲くし立てながら足を進める。彬の剣幕に驚いた秀行が、宥めるように彬の肩を押さえた。
「ちょっ、落ち着けって」
「昨日? なんの事?」
秀行の姿が見えていないかのように、隆哉は彼を完全に無視して彬に問いかけた。
心当りはないと、言いたいらしい。
「体育の時間! こける寸前、言っただろ! 『どうしてあの時、傍に来てくれなかったんだ』って!」
隆哉の前で足を止め、人差し指を突き付けながら言う。その彬の顔をじっと見つめていた隆哉は、ゆっくりと首を左右に振った。
「俺? ……いいや、言ってない」
淡々とした口調には変わりないが、その声には何処とはなしに戸惑いの色が見え隠れしている。
「それって、俺の声だった?」
思いがけない隆哉の台詞。その顔を信じられない思いで見上げた彬の口から、動揺した声が吐き出された。
「そりゃ、こっちの台詞だよ! ってか、昨日もお前、変な事言っただろうが! なんだありゃあ!」
隆哉の顔を指差し、捲くし立てながら足を進める。彬の剣幕に驚いた秀行が、宥めるように彬の肩を押さえた。
「ちょっ、落ち着けって」
「昨日? なんの事?」
秀行の姿が見えていないかのように、隆哉は彼を完全に無視して彬に問いかけた。
心当りはないと、言いたいらしい。
「体育の時間! こける寸前、言っただろ! 『どうしてあの時、傍に来てくれなかったんだ』って!」
隆哉の前で足を止め、人差し指を突き付けながら言う。その彬の顔をじっと見つめていた隆哉は、ゆっくりと首を左右に振った。
「俺? ……いいや、言ってない」
淡々とした口調には変わりないが、その声には何処とはなしに戸惑いの色が見え隠れしている。
「それって、俺の声だった?」
思いがけない隆哉の台詞。その顔を信じられない思いで見上げた彬の口から、動揺した声が吐き出された。
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