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緋い記憶

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 何を考えてるのか解らない奴の相手が、こんなに疲れるとは思わなかった。

 肩を落とす彬に、顔を覗き込んだ相沢が問いかけてくる。

「もしかして。すごく重い病気にかかってるとか?」

 声からも心が窺えないこの男が、本気で言ってるのか冗談半分のつもりなのか、彬には見当すらつかなかった。仕方がないので、こちらも当り障りのない答えを返しておく。

「重い病の奴が体育なんかすると思うか? 今日はちょっと、体調がワリィだけだよ」

「そっか。倒れた時の顔も大丈夫だったし。そうだよな」

 独り言のように呟く相沢の台詞に、やっぱり本気だったのかと視線を逸らす。

 ――よかった。ノリで「そう俺、心臓病なの」とか言わなくて。

「でもそれ。酷い顔だね。いつ頃から?」

 指を差しながら続くまたもや意味不明の問いかけに、律儀にも「生まれつき」と答えながら、俺こいつに何か恨みを買うような事したかなと記憶を反芻する。

「やっぱり。さっきの友達が原因かな」

 意味不明な言葉を延々と聞かされる理由なんて、思い当たる事は一つしかない。足を絡めて転んだ事ぐらいだ。
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