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緋い記憶
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まだスッキリしない頭を振りながら言う彬に。身を屈めた秀行が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫か? やっぱ病院行った方がいいかもな」
心から心配してくれている友人の姿に、彬は笑みを零していた。
――俺の選ぶ友達ってほんと、いい奴ばっか。
しかし俊介とは、まったく違うタイプ。
あの忌まわしい事故から一年。高校に上がった彬は、わざと俊介とは正反対の友人を選んだ。
俊介がスポーツマンタイプなら、こちらは物静かな秀才タイプ。
落ち着いた雰囲気に、穏やかな物腰。一見不釣合いな二人だったが、今の彬には秀行が一番安らげる相手だった。
「制服も持って来た。どっちでもいいけど、着替えるだろう?」
普段は保健教師が座っている椅子を引いて、秀行が腰掛ける。クルリと背中を向けて、彬が着替え終わるのを待ってくれる。部屋の外に出る程の気遣いは不要と、判断したようだ。
「お前が倒れた時、最初は病院に運ぶつもりだったんだ。苦しそうだったしな。でも、相沢がお前の額に触れた途端、気持ちよさそうに寝息たてるモンだから……」
ククッと笑った秀行が椅子を回転させて振り返る。
「大丈夫か? やっぱ病院行った方がいいかもな」
心から心配してくれている友人の姿に、彬は笑みを零していた。
――俺の選ぶ友達ってほんと、いい奴ばっか。
しかし俊介とは、まったく違うタイプ。
あの忌まわしい事故から一年。高校に上がった彬は、わざと俊介とは正反対の友人を選んだ。
俊介がスポーツマンタイプなら、こちらは物静かな秀才タイプ。
落ち着いた雰囲気に、穏やかな物腰。一見不釣合いな二人だったが、今の彬には秀行が一番安らげる相手だった。
「制服も持って来た。どっちでもいいけど、着替えるだろう?」
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「お前が倒れた時、最初は病院に運ぶつもりだったんだ。苦しそうだったしな。でも、相沢がお前の額に触れた途端、気持ちよさそうに寝息たてるモンだから……」
ククッと笑った秀行が椅子を回転させて振り返る。
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