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呪いの鎧武者
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「いよいよ、宝が見られるんだな、鎧武者の」
B棟三階、西廊下の突き当たり。一枚の扉の前に立って、俺は松岡に目を向けた。
「ああ」
松岡は鍵を開けて扉を開けると、すぐには足を踏み入れず無言で中を見つめていた。
「松岡?」
「あ? ああ。――変な空間だな、此処は」
そう言って手探りで電気をつける。明るくなった室内は、確かに松岡が言ったように『変な空間』だった。
教室の四分の一程の広さしかないその部屋は、小さな換気穴があるだけの、窓一つ無い何処か不自然な部屋だった。
四方の全ての壁に書棚が置かれ、部屋の真ん中にも部屋を半分に仕切るかのように書棚が置かれている。だがどう見ても、『鎧武者の宝』どころか『封印』らしきモノすら見当たらなかった。
松岡は「んー」と唸りながら、ゆっくりと部屋の中を歩き出した。視線はクルクルと、色んな所へと向けている。
「まさか、この本や書棚が『封印』なんて事はないよな……」
俺の呟きに手近にある棚から本を取り出した松岡は、パラパラとそれを捲った。
「どうかな。でも――此処にあるのは、卒業生の文集やアルバム。この学園に関する資料って感じだ。おかしなモンは無いぜ?」
手当たりしだい本やらアルバムやらを捲った彼は、部屋をグルリと見回し眉を寄せた。
「何処に隠してんだ? この部屋の」
「……此処にあるのは、間違いないんだよな?」
俺の台詞にフンと鼻を鳴らした松岡は、チロリと責めるような視線をこちらに向けた。
「そこから疑われちゃ、お話にならないな」
腕を組んだ松岡は、部屋の中をクルクルと歩き回り始めた。何周か部屋の中を回った後、彼は足を止め、俺を見た。
「なんか――変じゃねぇか、此処」
「変? 変って何処が?」
俺の問いに眉を寄せると、松岡は少し苛ついた声を出した。
「それが判らないから、悩んでんだろ。なんだろな、この感覚……」
額に指をあて、ゆっくりと部屋を見回す。
「窓が無いからなんじゃないの?」
「いや、それは部屋に入った時に、既に感じた違和感だ。そうじゃなくて、なんかこう――」
額にあてていた手を振りながら言った松岡は、ハッとした顔を俺に向けた。
「窓! そうか、窓か! でかしたぞ、山下」
パチンと指を鳴らすと同時に部屋を飛び出して行った松岡は、息を切らせながらすぐに戻って来た。
B棟三階、西廊下の突き当たり。一枚の扉の前に立って、俺は松岡に目を向けた。
「ああ」
松岡は鍵を開けて扉を開けると、すぐには足を踏み入れず無言で中を見つめていた。
「松岡?」
「あ? ああ。――変な空間だな、此処は」
そう言って手探りで電気をつける。明るくなった室内は、確かに松岡が言ったように『変な空間』だった。
教室の四分の一程の広さしかないその部屋は、小さな換気穴があるだけの、窓一つ無い何処か不自然な部屋だった。
四方の全ての壁に書棚が置かれ、部屋の真ん中にも部屋を半分に仕切るかのように書棚が置かれている。だがどう見ても、『鎧武者の宝』どころか『封印』らしきモノすら見当たらなかった。
松岡は「んー」と唸りながら、ゆっくりと部屋の中を歩き出した。視線はクルクルと、色んな所へと向けている。
「まさか、この本や書棚が『封印』なんて事はないよな……」
俺の呟きに手近にある棚から本を取り出した松岡は、パラパラとそれを捲った。
「どうかな。でも――此処にあるのは、卒業生の文集やアルバム。この学園に関する資料って感じだ。おかしなモンは無いぜ?」
手当たりしだい本やらアルバムやらを捲った彼は、部屋をグルリと見回し眉を寄せた。
「何処に隠してんだ? この部屋の」
「……此処にあるのは、間違いないんだよな?」
俺の台詞にフンと鼻を鳴らした松岡は、チロリと責めるような視線をこちらに向けた。
「そこから疑われちゃ、お話にならないな」
腕を組んだ松岡は、部屋の中をクルクルと歩き回り始めた。何周か部屋の中を回った後、彼は足を止め、俺を見た。
「なんか――変じゃねぇか、此処」
「変? 変って何処が?」
俺の問いに眉を寄せると、松岡は少し苛ついた声を出した。
「それが判らないから、悩んでんだろ。なんだろな、この感覚……」
額に指をあて、ゆっくりと部屋を見回す。
「窓が無いからなんじゃないの?」
「いや、それは部屋に入った時に、既に感じた違和感だ。そうじゃなくて、なんかこう――」
額にあてていた手を振りながら言った松岡は、ハッとした顔を俺に向けた。
「窓! そうか、窓か! でかしたぞ、山下」
パチンと指を鳴らすと同時に部屋を飛び出して行った松岡は、息を切らせながらすぐに戻って来た。
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