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呪いの鎧武者
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「それは、そっくりそのままお返ししたい質問ですね、新崎先生」
中に入った松岡は、パチリと電気をつけた。突然明るくなった教室に、松岡以外の俺達は目に手をかざした。
彼はそのままツカツカと教卓まで行き、それに寄り掛かるように右肘を乗せた。
「馬鹿! 電気をつけるな!」
目を剥いて怒った三十そこそこの男性教師は、急いで電気を消そうとこちらへと足を進めた。が、その途中で松岡が腕を掴み、彼を引き戻した。
「今更、ジタバタするんじゃねぇよ、見苦しい。――おやおや、駄目じゃないですか、先生。教え子を泣かしちゃ。二年A組の担任失格ですよ」
クスクスと笑った松岡は、それでも新崎を掴む手には力を入れて、彼を放そうとはしなかった。その手を剥がそうと、新崎がもがく。
「何故……此処に……?」
涙を拭いながら言った高科先輩に、松岡はニヤリと唇の端を上げた。
「それはですね。佐藤を事故に遭わせた上に、あなたが守りたかった小さな命をも流してしまった、愚かな男の顔を見てやろうと思ったからですよ」
「馬鹿言うな! こいつが勝手に流産したんだ!」
そう叫んだ新崎に、高科先輩は「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げ、床に崩れ込んだ。彼女に目を向けた松岡が掴んでいた手を放し、すぐさま大きく引いた手の甲で、思いっきり新崎の頬を弾いた。
ガタッガタンッ! と大きな音をさせて机に倒れ込んだ新崎が、床に尻をついた。状況が把握出来ずに、パチパチと瞬きする。
それを冷たく見下ろした松岡は、手の甲に小さく息を吹きかけフリフリと振った。
「流す原因を作った男が、偉そうに言うんじゃねぇよ。馬鹿が」
吐き捨てるように言った松岡が、顎をしゃくるようにして俺に合図する。俺は高科先輩に歩み寄ると、手を貸しながら椅子へと座らせた。
子供のように、両手に顔を埋めて泣きじゃくる彼女にどうしてやればいいのか判らず、俺は只、先輩の背中をポンポンと叩く事しかしてやれなかった。――その背がひどく、震えていた。
「――教師を、殴ったな」
頬を擦りながら、ギロリと悪意の籠った瞳で松岡を睨みあげる。
「左手だった事に感謝しろよ」
「何を! 貴様ァ……」
両腕を組んで言った松岡に、ヨロヨロと新崎が立ち上がった。
「そうか、思い出したぞ。お前、一年の松岡だな」
ニヤリと厭らしい笑みを貼り付けた新崎は、机へと凭れながら言葉を続けた。
中に入った松岡は、パチリと電気をつけた。突然明るくなった教室に、松岡以外の俺達は目に手をかざした。
彼はそのままツカツカと教卓まで行き、それに寄り掛かるように右肘を乗せた。
「馬鹿! 電気をつけるな!」
目を剥いて怒った三十そこそこの男性教師は、急いで電気を消そうとこちらへと足を進めた。が、その途中で松岡が腕を掴み、彼を引き戻した。
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クスクスと笑った松岡は、それでも新崎を掴む手には力を入れて、彼を放そうとはしなかった。その手を剥がそうと、新崎がもがく。
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「それはですね。佐藤を事故に遭わせた上に、あなたが守りたかった小さな命をも流してしまった、愚かな男の顔を見てやろうと思ったからですよ」
「馬鹿言うな! こいつが勝手に流産したんだ!」
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それを冷たく見下ろした松岡は、手の甲に小さく息を吹きかけフリフリと振った。
「流す原因を作った男が、偉そうに言うんじゃねぇよ。馬鹿が」
吐き捨てるように言った松岡が、顎をしゃくるようにして俺に合図する。俺は高科先輩に歩み寄ると、手を貸しながら椅子へと座らせた。
子供のように、両手に顔を埋めて泣きじゃくる彼女にどうしてやればいいのか判らず、俺は只、先輩の背中をポンポンと叩く事しかしてやれなかった。――その背がひどく、震えていた。
「――教師を、殴ったな」
頬を擦りながら、ギロリと悪意の籠った瞳で松岡を睨みあげる。
「左手だった事に感謝しろよ」
「何を! 貴様ァ……」
両腕を組んで言った松岡に、ヨロヨロと新崎が立ち上がった。
「そうか、思い出したぞ。お前、一年の松岡だな」
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