ストレイ・ラム【完結】

Motoki

文字の大きさ
上 下
99 / 115
呪いの鎧武者

38

しおりを挟む
 二人で軽く食事を済ませてから学園に戻った俺達は、雨で運動場が使えない為に廊下や階段で基礎練習をする生徒達を縫うように避けて、自分達の隠れる場所を探した。

 結局、全てのカーテンが引かれる頃には、俺達は屋上へと続くドアの前に座り込んでいた。

 薄暗くなっていくと共に電気が消えて、人の気配も消えていく。暫くは外から聞こえていた、叫ぶようにはしゃぐ声もやがては聞こえなくなった。



 辺りを闇と静寂だけが支配し始めた頃。

 俺の隣。膝の上で顔を伏せるように寝ていた松岡が、不意に顔を上げた。

「暇だな……」

 ボソリと呟いて、ゆっくりと階段を下りて行く。彼は真っ直ぐに中央階段へ向かうと三階に上がって手摺りに肘をつき、悩み出した。

「さて。何処に隠れるかな……」

 ココココッ、ココココッ、と四本の指で手摺りを小突いてリズムを取る。自分の全身を映している筈の、黒い大鏡を見つめながら考え込んでいた。

「もし二人が現れるとしたら、この中央階段を上がって来るよな。それまで何処にいるべきだろ。各教室は鍵掛かってんし、西階段か東階段だよな……。でもそれだと、二人の動きが判りづらいんだよなぁ。どうするよ? 山下」

 こちらを振り返った松岡に、肩を竦める。

「お前に任せるよ。それより、俺はこの真っ暗闇の方が気になる。あのペンライト、今日は持ってないのかよ?」

 大して役に立たない代物だったが、まったく何もない闇よりは幾分もマシな筈だ。小さい明かりでも少しは気分を紛らわせてくれる。暗闇というのは、息苦しくなって仕方がないものなのだ。

 大真面目で言ったのに、松岡はカクリと肩を落とした。ジッと俺を見つめる松岡の目は、さぞかし呆れているに違いない。

 辺りが暗いお陰で、幸いそれを見ずに済んだが……。

「早く言え、そーゆう事は。アレは鞄の中だよ。……仕方ねぇな。取って来てやるから、ちょっと待ってろ」

 そう言ってクルリと背を向けた松岡は、トントンと階段を下りて行った。踊り場を曲がって姿が見えなくなったと思った、――次の瞬間。

 勢いよく舞い戻って来た松岡が、俺の手首を引いた。

「なっ……!」

 もう少しで落ちそうになった俺の口を、松岡の手が塞ぐ。

「黙ってろ! 西階段から、来やがった……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

日月神示を読み解く

あつしじゅん
ミステリー
 神からの預言書、日月神示を読み解く

処理中です...