90 / 115
呪いの鎧武者
29
しおりを挟む
パンパンッと手を打った依羅さんを、松岡は拗ねたような目でジトリと見遣った。
「ひでぇな、依羅さん。なんか気付いてんだろ? 封印されてんのは、鎧武者じゃないのか?」
「いいや。私も鎧武者だと思うよ。でも私の意見より、お前達の意見を聞かせておくれ」
頬杖をついて、「さあ、どうぞ」と手を振る。
「ちぇっ。じゃあ山下。お前はどう思うよ?」
「俺? そう……だな。俺があの話で疑問に思った事と言えば、鎧武者を封印するのにどうしてわざわざ屋敷を取り壊して学園を建てたんだろって事かなぁ。それこそ松岡の言う通り、鎧武者を封印した鏡とそのお宝っていうのをまとめて、祠でも建てた方がそれらしいじゃん」
「だよなぁ? あとあの『大時計』。針じゃなく、灯りが消えただけで大騒ぎになったんだぜ。『時間を刻む』事じゃなく、『灯りを燈す』って事に意味があんのか? どーいうこった?」
唸った松岡の横で、依羅さんが眺めるように俺達を見つめていた。その態度はまさしく、弟子に難題を与えてその悩む姿を見守るお師匠様、という感じだった。
「そういや彼女、あの油絵も曾爺さんが持ち込んだって言ってたな。後、資料室を気に入って使ってたとかって……」
「もしかしたらそれも、『封印』に何か関係あるのかも――」
「おおっ」と松岡はパチンと指を鳴らし、勢い込んだ様子で俺を指差した。――が、そのままで止まり、次の言葉が出てこなかった。それは俺も同様で、俺達にはそれ以上の答えは導き出せそうになかった。
両手を上げて「降参」を表した松岡に、依羅さんは微笑んで「おしいね」と呟いた。
「私もその理事長のお嬢さんの話を聞いた時、お前達と同じ疑問を持ったよ。でも保、やはり知識は必要だ。読書の時間を大切にする事だね。お前と私の大きな違い。それは、知っているか、知らないかという処だ。私はね、保。その魔鏡、それ自体も封印の一部だと思うよ」
「封印の一部? ――その、根拠は?」
「そうだね。私の考えでは鎧武者はその魔鏡にではなく、校舎全体に封印されている。何故なら、封印されてるのにまだ徘徊しているんだろう? 校舎内を。後は、私の知り得る封印の方法に当てはまるから……かな? それを導き出した着目点は、お前と一緒だよ。あの大時計の『針』ではなく『灯り』に封印の力があるという処だ」
「ひでぇな、依羅さん。なんか気付いてんだろ? 封印されてんのは、鎧武者じゃないのか?」
「いいや。私も鎧武者だと思うよ。でも私の意見より、お前達の意見を聞かせておくれ」
頬杖をついて、「さあ、どうぞ」と手を振る。
「ちぇっ。じゃあ山下。お前はどう思うよ?」
「俺? そう……だな。俺があの話で疑問に思った事と言えば、鎧武者を封印するのにどうしてわざわざ屋敷を取り壊して学園を建てたんだろって事かなぁ。それこそ松岡の言う通り、鎧武者を封印した鏡とそのお宝っていうのをまとめて、祠でも建てた方がそれらしいじゃん」
「だよなぁ? あとあの『大時計』。針じゃなく、灯りが消えただけで大騒ぎになったんだぜ。『時間を刻む』事じゃなく、『灯りを燈す』って事に意味があんのか? どーいうこった?」
唸った松岡の横で、依羅さんが眺めるように俺達を見つめていた。その態度はまさしく、弟子に難題を与えてその悩む姿を見守るお師匠様、という感じだった。
「そういや彼女、あの油絵も曾爺さんが持ち込んだって言ってたな。後、資料室を気に入って使ってたとかって……」
「もしかしたらそれも、『封印』に何か関係あるのかも――」
「おおっ」と松岡はパチンと指を鳴らし、勢い込んだ様子で俺を指差した。――が、そのままで止まり、次の言葉が出てこなかった。それは俺も同様で、俺達にはそれ以上の答えは導き出せそうになかった。
両手を上げて「降参」を表した松岡に、依羅さんは微笑んで「おしいね」と呟いた。
「私もその理事長のお嬢さんの話を聞いた時、お前達と同じ疑問を持ったよ。でも保、やはり知識は必要だ。読書の時間を大切にする事だね。お前と私の大きな違い。それは、知っているか、知らないかという処だ。私はね、保。その魔鏡、それ自体も封印の一部だと思うよ」
「封印の一部? ――その、根拠は?」
「そうだね。私の考えでは鎧武者はその魔鏡にではなく、校舎全体に封印されている。何故なら、封印されてるのにまだ徘徊しているんだろう? 校舎内を。後は、私の知り得る封印の方法に当てはまるから……かな? それを導き出した着目点は、お前と一緒だよ。あの大時計の『針』ではなく『灯り』に封印の力があるという処だ」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる