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呪いの鎧武者
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「彼女、こんな天気のいい日に傘を持っていただろ? ――いいか、山下。自分では意識してなくても、自分の持ち物と他人の持ち物とでは、その扱いが微妙に違うモンなんだぜ。俺にはすぐにあれが高科先輩の傘ではないと判った。彼女はお前も見たように、学園にも塾にも車で送迎されている。彼女は有名人だからな。何処の塾に行ってるかは、俺でなくても知ってるさ。
昨日のあの大雨じゃ、学園だろうが塾だろうが、誰かが彼女に傘を貸すとも思えないし、ましてや彼女が、置き傘なんて誰の物かも判らない傘を使うとも思えない。そんな事をするくらいなら、車を呼べばいいだけだからな。という事は、彼女は誰かの傘に入れてもらったって事になる。それは誰か? 高科先輩が家に持って帰っていたという事は、相手は途中で傘から出た人物。俺は十中八九、その相手が同じ塾に通い、傘も持たずに走っていた佐藤だと思った。だからお前も見てたように、鎌を掛けてみたってワケ」
クルクルと手を振りながら説明する松岡に、俺は感心と呆れが混じった声を出した。
「えらく自信満々な鎌掛けなのな」
「半端な掛け方なら、鎌を掛ける意味がないだろ? それより俺が驚いたのは、佐藤が最初に逃げ出した人物と、佐藤を追いかけていた人物が、別人だったって事の方だ」
「そういや、そんな事言ってたな」
「佐藤が最初に逃げ出した人物。それは間違いなく高科先輩だ。だが、今話した限りでは、彼女はしつこく佐藤を追いかけるとは思えない。何より、彼女は佐藤が車に轢かれたのを知らなかった。傘を返そうと持ってきてたぐらいだからな」
理事長室の前で足を止めた松岡は、腕を組みその扉に背を預けた。そのままの恰好でずっと黙っていた彼は、チャイムが鳴り終わり、暫くしてようやく口を開いた。
「あの鎧武者に秘密があるのは明らかだが……。彼女、高科先輩にも何かあるな。だって彼女は――」
そこで言葉を切った松岡は、フイッと視線を投げると背中を引き剥がした。
「来たか」
松岡につられて目を向けると、丁度高科先輩が角を曲がって来るところだった。
「お待たせしました。どうぞ」
彼女はガチャリと鍵を開けて扉を開くと、俺達を招き入れた。
「どうぞお掛けになって」
彼女はソファを手で示し、腕時計を確認するとガチャリと再び鍵を掛けた。
「誰にも、聞かれたくありませんの」
昨日のあの大雨じゃ、学園だろうが塾だろうが、誰かが彼女に傘を貸すとも思えないし、ましてや彼女が、置き傘なんて誰の物かも判らない傘を使うとも思えない。そんな事をするくらいなら、車を呼べばいいだけだからな。という事は、彼女は誰かの傘に入れてもらったって事になる。それは誰か? 高科先輩が家に持って帰っていたという事は、相手は途中で傘から出た人物。俺は十中八九、その相手が同じ塾に通い、傘も持たずに走っていた佐藤だと思った。だからお前も見てたように、鎌を掛けてみたってワケ」
クルクルと手を振りながら説明する松岡に、俺は感心と呆れが混じった声を出した。
「えらく自信満々な鎌掛けなのな」
「半端な掛け方なら、鎌を掛ける意味がないだろ? それより俺が驚いたのは、佐藤が最初に逃げ出した人物と、佐藤を追いかけていた人物が、別人だったって事の方だ」
「そういや、そんな事言ってたな」
「佐藤が最初に逃げ出した人物。それは間違いなく高科先輩だ。だが、今話した限りでは、彼女はしつこく佐藤を追いかけるとは思えない。何より、彼女は佐藤が車に轢かれたのを知らなかった。傘を返そうと持ってきてたぐらいだからな」
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「あの鎧武者に秘密があるのは明らかだが……。彼女、高科先輩にも何かあるな。だって彼女は――」
そこで言葉を切った松岡は、フイッと視線を投げると背中を引き剥がした。
「来たか」
松岡につられて目を向けると、丁度高科先輩が角を曲がって来るところだった。
「お待たせしました。どうぞ」
彼女はガチャリと鍵を開けて扉を開くと、俺達を招き入れた。
「どうぞお掛けになって」
彼女はソファを手で示し、腕時計を確認するとガチャリと再び鍵を掛けた。
「誰にも、聞かれたくありませんの」
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