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呪いの鎧武者
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昨日の雨が嘘のように、青い空が広がっている。雲は多いものの、それは雨を予感させる灰色のモノではなくて、夏が近い事を告げる白い綿のような雲だった。
いつもより早め――八時少し前に学園に着いた俺達は、其処此処にある水溜りを避けて、塀の周りをゆっくりと歩き出した。松岡はあたかも散歩をするような足取りだったが、たまに立ち止まっては、小さな溝を覗いたり、突然クルリと向きを変えて歩き出したりした。特に彼女が鎧武者を目撃しただろう例の場所では、しゃがんだり、靴の底でアスファルトの地面を擦ったり、塀を指でなぞったり、様々な事をした。
其処に傘など落ちていなかったし、他にもなんの収穫もなかったらしく、松岡は不機嫌な様子でジッと彼女が鎧武者を見たという窓を見上げた。既にカーテンは開けられており、いつもとなんら変わりはない。
「そろそろ、登校してくる時間帯だな」
松岡は再びゆっくり歩き出すと、正門の前で足を止めた。正門の壁に凭れて、まだまばらな生徒一人一人を素早い目線で追った。腕を組んで、リズムを取るように人差し指を動かしている。
「こんなトコで何してるんだ」
俺の問いに、彼は目は生徒達に向けたままで答えた。
「待ってんだよ。鎧武者について、訊き出さなきゃなんねぇだろ」
「理事長を?」
「――彼女をさ」
獲物を見つけたように目を見開いた松岡は、壁から背中を引き剥がした。しかし、眉間に皺を寄せて動きを止めると、唸るように声を吐き出した。
「何故だ?」
「えっ?」
戸惑う俺を置いて、松岡はスタスタと歩き出した。黒い車から降り立ったある人物の前で足を止め、ニッコリと例の営業スマイルを浮かべる。
「おはようございます。高科由梨絵先輩」
一瞬驚いた顔で松岡を見たが、理事長の娘である彼女は知らない相手から挨拶をされるのは珍しくない様子で、次の瞬間には穏やかな微笑みを松岡に向けた。
「おはようございます」
若い男の運転手が差し出した赤い傘を受け取ると、彼女は真っ直ぐと校門へと向かった。
「昨夜は大変でしたね。あの大雨では、傘があっても濡れたのではありませんか?」
横について歩きながら喋る松岡に、彼女は訝しげな目を向けた。
「塾の帰り、歩いて帰られたでしょ?」
彼女は首を傾げるようにして、「ああ」と納得したように頷いた。
いつもより早め――八時少し前に学園に着いた俺達は、其処此処にある水溜りを避けて、塀の周りをゆっくりと歩き出した。松岡はあたかも散歩をするような足取りだったが、たまに立ち止まっては、小さな溝を覗いたり、突然クルリと向きを変えて歩き出したりした。特に彼女が鎧武者を目撃しただろう例の場所では、しゃがんだり、靴の底でアスファルトの地面を擦ったり、塀を指でなぞったり、様々な事をした。
其処に傘など落ちていなかったし、他にもなんの収穫もなかったらしく、松岡は不機嫌な様子でジッと彼女が鎧武者を見たという窓を見上げた。既にカーテンは開けられており、いつもとなんら変わりはない。
「そろそろ、登校してくる時間帯だな」
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「理事長を?」
「――彼女をさ」
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「何故だ?」
「えっ?」
戸惑う俺を置いて、松岡はスタスタと歩き出した。黒い車から降り立ったある人物の前で足を止め、ニッコリと例の営業スマイルを浮かべる。
「おはようございます。高科由梨絵先輩」
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「おはようございます」
若い男の運転手が差し出した赤い傘を受け取ると、彼女は真っ直ぐと校門へと向かった。
「昨夜は大変でしたね。あの大雨では、傘があっても濡れたのではありませんか?」
横について歩きながら喋る松岡に、彼女は訝しげな目を向けた。
「塾の帰り、歩いて帰られたでしょ?」
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