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呪いの鎧武者
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小一時間程して現れたその男は、山崎警視と紹介された。夜中の十二時をとうに回っていたが、快く事故の詳細を調べてくれたらしかった。
「これはこれは。お待たせしてしまいましたか」
年齢は三十代半ば程だが依羅さんの友人らしく、親しげな笑みを依羅さんに向けた。その後で神経質そうな指をオールバックの濡れた髪に通し、俺達に顔を向けた。
「こんな時間帯に未成年がいるとは……。感心しませんね」
サングラスを外して、ニヤリと笑う。
「ククッ……。よく言うよ、今更」
「一応、言っとかねばね。これでも私は、警察の人間ですので」
肩を震わす松岡の隣に座ると、彼は濡れた肩を掃いながら依羅さんを見上げた。
「彼女を轢いた運転手の話では、彼女は突然、道路に飛び出して来たそうです。目撃者も何人かいますし、酔っ払い運転でもない。――ああ、ありがとうございます。夏が近いとは言っても、雨に濡れた体はえらく冷えますからね。此処の美味しいコーヒーは、有難い」
依羅さんの置いたコーヒーを口に運んだ警視は、満足げに微笑んだ。
「それで、事故があった場所は何処です? 保の学園の近くですか?」
依羅さんの質問に、小さく首を振る。
「いいえ。大通りですから、彼の学園からは少し離れていますね。只――そう。目撃者達が言うには、彼女は前をろくに見もせず走っていたそうです。つまり、後ろばかりを気にしていた」
「誰かに、追われでもしているかのように?」
「そう」
依羅さんから俺達に視線を移した山崎警視は、唇の端を上げてニヤリと笑った。
「事故に遭ったのが綾香嬢の友人だから、事故の事を詳しく知りたいとの事でしたが、どうやらそれだけではないようですね。今度は何に、首を突っ込んでいるんです?」
興味津々といった様子で訊いてくる警視に、依羅さんはそれを無視して更に質問を続けた。
「彼女の持ち物は、何でしたか? 塾の帰りだったんじゃないかと思うんですが?」
「ええ、その通り。きっと、塾の帰りだったんでしょうね。鞄の中には、勉強道具しか入っていませんでしたから。後、歩道に落としたスマートフォンと」
肩を竦めて言った山崎警視を横目に、松岡は考え込むように頬杖をついた。
「塾の帰り――って事は、今日も学園の横を通った訳だよなぁ。其処で何かを見たか、それとも聞いたか、何者かに出会ったか……。ま、可能性の問題だけどな」
「これはこれは。お待たせしてしまいましたか」
年齢は三十代半ば程だが依羅さんの友人らしく、親しげな笑みを依羅さんに向けた。その後で神経質そうな指をオールバックの濡れた髪に通し、俺達に顔を向けた。
「こんな時間帯に未成年がいるとは……。感心しませんね」
サングラスを外して、ニヤリと笑う。
「ククッ……。よく言うよ、今更」
「一応、言っとかねばね。これでも私は、警察の人間ですので」
肩を震わす松岡の隣に座ると、彼は濡れた肩を掃いながら依羅さんを見上げた。
「彼女を轢いた運転手の話では、彼女は突然、道路に飛び出して来たそうです。目撃者も何人かいますし、酔っ払い運転でもない。――ああ、ありがとうございます。夏が近いとは言っても、雨に濡れた体はえらく冷えますからね。此処の美味しいコーヒーは、有難い」
依羅さんの置いたコーヒーを口に運んだ警視は、満足げに微笑んだ。
「それで、事故があった場所は何処です? 保の学園の近くですか?」
依羅さんの質問に、小さく首を振る。
「いいえ。大通りですから、彼の学園からは少し離れていますね。只――そう。目撃者達が言うには、彼女は前をろくに見もせず走っていたそうです。つまり、後ろばかりを気にしていた」
「誰かに、追われでもしているかのように?」
「そう」
依羅さんから俺達に視線を移した山崎警視は、唇の端を上げてニヤリと笑った。
「事故に遭ったのが綾香嬢の友人だから、事故の事を詳しく知りたいとの事でしたが、どうやらそれだけではないようですね。今度は何に、首を突っ込んでいるんです?」
興味津々といった様子で訊いてくる警視に、依羅さんはそれを無視して更に質問を続けた。
「彼女の持ち物は、何でしたか? 塾の帰りだったんじゃないかと思うんですが?」
「ええ、その通り。きっと、塾の帰りだったんでしょうね。鞄の中には、勉強道具しか入っていませんでしたから。後、歩道に落としたスマートフォンと」
肩を竦めて言った山崎警視を横目に、松岡は考え込むように頬杖をついた。
「塾の帰り――って事は、今日も学園の横を通った訳だよなぁ。其処で何かを見たか、それとも聞いたか、何者かに出会ったか……。ま、可能性の問題だけどな」
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