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呪いの鎧武者
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その次の日、喫茶店『ストレイ・ラム』を俺達が出たのは、夜の九時半過ぎだった。学園までは、歩いて二十分程の距離。依羅さんの言ったように大量の雨が降り、夜になって雷も鳴り出した。
「鎧武者、出ると思うか?」
傘をさして歩きながら、俺は松岡に声をかけた。
「そーだな。……出る、と思う。出ないとちょっと厄介だな」
「厄介?」
「俺の考えでは、時間か、雷か、カーテンか、もしくは雨か……。この四つの中に鎧武者が出てきた原因がある筈なんだ。――ああ後、車ってのがあったか。まあ、それは置いといて。それ以外の四つが完全に揃った今夜、出ないとなると、簡単に結果は出せそうにないな。それこそ、その車を探し出さなきゃいけなくなるかもしれないぞ」
そんなのはご免蒙りたいなと顔を顰めた松岡に、俺はクスリと笑みを洩らした。
「今夜もその車。停まってくれてりゃ、問題ないのにな」
「まあ、そう簡単にいかないのが、現実ってモンだぜ」
ハッと笑った松岡は、真っ直ぐ前を向いて黙って歩き出した。
「それにしても。まさか佐藤が鎧武者を見た話が学園中に広まってるとは、思わなかったな」
今朝学園に着いた時点で、廊下の其処此処で話題になっていたし、昼休みを過ぎた頃には他の学年の生徒達にまで広まっていた。
「そうか?」
「そうじゃないか?」
顔を向けた俺に、松岡はヒョイと肩を竦めてみせた。
「あれを見たのが女でなく、男だったら驚いたかもな」
「何それ」
「だって、見たのは女なんだぜ。個人差はあるにしろ、あの話好きの、な。佐藤が『鎧武者』の話をしたのは、綾香以外にもいたってだけの事だ。軽薄な女達の手にかかりゃ、『噂』なんてモンは鼠算式にあっという間に広まっていくぜ。それこそ、驚異的な速さでな。――綾香はそこまで、馬鹿じゃない」
どうも松岡は、世間の女に対してあまりいい印象を持ってはいないようだ。その事を俺が口にすると、松岡は彼がよくする「ハッ」と吐き捨てるような笑い方をした。
「俺は女が嫌いなんじゃなく、馬鹿が嫌いなんだよ。だが、殆どの女が俺の思う『馬鹿』に当てはまるのは、俺の所為じゃないぜ」
学園に着いてもすぐには校舎に近寄らず、学園の塀に沿って松岡は歩き出した。だが暫くすると足を止め、パチンと指を鳴らした。
「佐藤が言ってた違和感ってのは、これか」
「何?」
「鎧武者、出ると思うか?」
傘をさして歩きながら、俺は松岡に声をかけた。
「そーだな。……出る、と思う。出ないとちょっと厄介だな」
「厄介?」
「俺の考えでは、時間か、雷か、カーテンか、もしくは雨か……。この四つの中に鎧武者が出てきた原因がある筈なんだ。――ああ後、車ってのがあったか。まあ、それは置いといて。それ以外の四つが完全に揃った今夜、出ないとなると、簡単に結果は出せそうにないな。それこそ、その車を探し出さなきゃいけなくなるかもしれないぞ」
そんなのはご免蒙りたいなと顔を顰めた松岡に、俺はクスリと笑みを洩らした。
「今夜もその車。停まってくれてりゃ、問題ないのにな」
「まあ、そう簡単にいかないのが、現実ってモンだぜ」
ハッと笑った松岡は、真っ直ぐ前を向いて黙って歩き出した。
「それにしても。まさか佐藤が鎧武者を見た話が学園中に広まってるとは、思わなかったな」
今朝学園に着いた時点で、廊下の其処此処で話題になっていたし、昼休みを過ぎた頃には他の学年の生徒達にまで広まっていた。
「そうか?」
「そうじゃないか?」
顔を向けた俺に、松岡はヒョイと肩を竦めてみせた。
「あれを見たのが女でなく、男だったら驚いたかもな」
「何それ」
「だって、見たのは女なんだぜ。個人差はあるにしろ、あの話好きの、な。佐藤が『鎧武者』の話をしたのは、綾香以外にもいたってだけの事だ。軽薄な女達の手にかかりゃ、『噂』なんてモンは鼠算式にあっという間に広まっていくぜ。それこそ、驚異的な速さでな。――綾香はそこまで、馬鹿じゃない」
どうも松岡は、世間の女に対してあまりいい印象を持ってはいないようだ。その事を俺が口にすると、松岡は彼がよくする「ハッ」と吐き捨てるような笑い方をした。
「俺は女が嫌いなんじゃなく、馬鹿が嫌いなんだよ。だが、殆どの女が俺の思う『馬鹿』に当てはまるのは、俺の所為じゃないぜ」
学園に着いてもすぐには校舎に近寄らず、学園の塀に沿って松岡は歩き出した。だが暫くすると足を止め、パチンと指を鳴らした。
「佐藤が言ってた違和感ってのは、これか」
「何?」
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