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呪いの鎧武者
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「中央階段? じゃあ、B棟だな。依羅さん、俺達の学園の校舎はA棟、B棟、D棟からなってて、それを二階の渡り廊下が結んでいるんだ。上から見ると、丁度『王』の字になる。A棟とD棟は四階建てで、B棟だけが三階建て。中央階段っていうのは、B棟の渡り廊下に沿ってある一番大きな階段の事だ」
松岡は備え付けのペーパーを一枚取ると、それを広げてボールペンで校舎の形を記し、依羅さんと友也さんに見せた。
「美術室は同じB棟だけど、東側の一番端にあって二階だ。いくらなんでも、場所は間違いようがない」
校舎の図の中央階段と美術室の場所に小さく丸で印をつけた松岡は、ハタとボールペンを止めて佐藤を見遣った。
「でもカーテンは? その鎧武者はカーテンより窓側にいたんですか?」
「カーテン?」
訊き返してきた友也さんに、松岡はカウンターについた手で顎を支えた。
「そう。あの学園には、教室だけじゃなく廊下にもカーテンがかけてあるんだ。下校時刻には、全部のカーテンが閉められる。つまり――」
「そうだな。外から校舎の中なんか見える筈がない。なんで見えたんだ?」
俺の問いに、佐藤が首を傾げる。
「――そういえば……。いいえ、開いてましたよ。他の場所は判りませんけど、あの私が見た窓のカーテンは開いてました」
彼女はちょっと考えながら答え、間違いないというふうに頷いてみせた。
「塾の帰りだったんですよね? 時間は何時頃ですか?」
「十時過ぎだった筈です」
「うーん。その鎧武者ですが、あの油絵が廊下に立て掛けてあったのを、本物と見間違えたって事はないですか?」
「一瞬でしたけど、絵ではなかったと思います。それに、あの絵の鎧武者は座ってますよね。でも、私が見た鎧武者は立ってたんです」
その言葉を聞いて、少しゾワリとしたものが背中を走る。確かにそこまで見えたのなら、彼女の怖がりようも納得がいく気がした。さっき言ってたように、見間違いとも思えないのなら、亡霊じゃないにしても、真っ暗な夜中の校舎を鎧を着て歩き回っている奴がいるという事になる。そちらの方も、余計に怖いモノがあるのだろう。
「依羅さん――」
助けを求めるように声を出した松岡に、依羅さんはクスリと笑って身を乗り出した。
松岡は備え付けのペーパーを一枚取ると、それを広げてボールペンで校舎の形を記し、依羅さんと友也さんに見せた。
「美術室は同じB棟だけど、東側の一番端にあって二階だ。いくらなんでも、場所は間違いようがない」
校舎の図の中央階段と美術室の場所に小さく丸で印をつけた松岡は、ハタとボールペンを止めて佐藤を見遣った。
「でもカーテンは? その鎧武者はカーテンより窓側にいたんですか?」
「カーテン?」
訊き返してきた友也さんに、松岡はカウンターについた手で顎を支えた。
「そう。あの学園には、教室だけじゃなく廊下にもカーテンがかけてあるんだ。下校時刻には、全部のカーテンが閉められる。つまり――」
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俺の問いに、佐藤が首を傾げる。
「――そういえば……。いいえ、開いてましたよ。他の場所は判りませんけど、あの私が見た窓のカーテンは開いてました」
彼女はちょっと考えながら答え、間違いないというふうに頷いてみせた。
「塾の帰りだったんですよね? 時間は何時頃ですか?」
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「うーん。その鎧武者ですが、あの油絵が廊下に立て掛けてあったのを、本物と見間違えたって事はないですか?」
「一瞬でしたけど、絵ではなかったと思います。それに、あの絵の鎧武者は座ってますよね。でも、私が見た鎧武者は立ってたんです」
その言葉を聞いて、少しゾワリとしたものが背中を走る。確かにそこまで見えたのなら、彼女の怖がりようも納得がいく気がした。さっき言ってたように、見間違いとも思えないのなら、亡霊じゃないにしても、真っ暗な夜中の校舎を鎧を着て歩き回っている奴がいるという事になる。そちらの方も、余計に怖いモノがあるのだろう。
「依羅さん――」
助けを求めるように声を出した松岡に、依羅さんはクスリと笑って身を乗り出した。
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