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呪いの鎧武者
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「お待たせ致しました。上宮依羅と申します」
ペコリと頭を下げた依羅さんが、彼女にニッコリと微笑みかける。他の『子羊』同様、丁寧に希望を訊く。
「ご依頼内容は、他人に聞かれては困る事でしょうか。それならば、場所を二階に移しますが?」
「いいえ。とんでもないです。只ちょっと、不思議な体験をしたもので――。笑われるかもしれないんですけど、怖くって……」
俯く彼女の向こうから、綾香が俺達に顔を向けた。
「由美、『鎧武者』を見たらしいのよ」
「鎧武者ってアレ? 大っきい油絵の?」
俺は驚きの声をあげ、隣の松岡と顔を見合わせた。
「そうよ。あの七不思議の一つ」
俺達の通っている学園の美術室の壁には、日本刀を支えのようにして座っている、鎧武者の油絵が飾られていた。何故か直接木の板に実物大の大きさで描かれたそれは、其処に飾られている理由も、何故鎧武者が描かれているのかも不明のまま、学園の七不思議の一つと数えられていた。
その内容というのも、「毎夜絵から抜け出ては現れる鎧武者は、宝を守る為校舎内を徘徊し、その姿を見た者には呪いをかけ地獄へと連れて行く」といったものだった。この噂もいい加減なモノで、何故学校に宝が隠されているのかも、宝が何なのかも、何処に隠されているのかも、何故鎧武者が宝を守る為に毎夜校舎内を徘徊するのかも、何一つちゃんとした理由は説明されていなかった。その話は只、例の油絵から誰かが創り出した、生徒の恐怖心を煽る為だけの代物だった。
「それで松岡、由美はあんたをご指名よ」
綾香の言葉に、松岡が「あぁ?」と怪訝な声をあげた。依羅さんへと視線を投げ、呆れたように肩を竦めてみせる。それを見た佐藤が、ガッカリしたように更に肩を落とした。
「何よ、松岡。その態度は!」
立ち上がった綾香を手を上げて制した依羅さんは、やさしい声を出して佐藤の顔を覗き込んだ。
「しかしですね、子羊。私共はまだ、肝心のご依頼内容を聞いていないのです。どうか順序立てて、お話をお伺い出来ないものでしょうか?」
十歳も年下の少女に話しているとは思えない程丁寧に言った依羅さんに、俺は内心驚いていた。この前の新田の時とは、話し方まで違う。それは松岡も気付いているようで、先程からジッと真剣な眼差しを依羅さんに注いでいた。
「――はい……あ、すみません」
ペコリと頭を下げた依羅さんが、彼女にニッコリと微笑みかける。他の『子羊』同様、丁寧に希望を訊く。
「ご依頼内容は、他人に聞かれては困る事でしょうか。それならば、場所を二階に移しますが?」
「いいえ。とんでもないです。只ちょっと、不思議な体験をしたもので――。笑われるかもしれないんですけど、怖くって……」
俯く彼女の向こうから、綾香が俺達に顔を向けた。
「由美、『鎧武者』を見たらしいのよ」
「鎧武者ってアレ? 大っきい油絵の?」
俺は驚きの声をあげ、隣の松岡と顔を見合わせた。
「そうよ。あの七不思議の一つ」
俺達の通っている学園の美術室の壁には、日本刀を支えのようにして座っている、鎧武者の油絵が飾られていた。何故か直接木の板に実物大の大きさで描かれたそれは、其処に飾られている理由も、何故鎧武者が描かれているのかも不明のまま、学園の七不思議の一つと数えられていた。
その内容というのも、「毎夜絵から抜け出ては現れる鎧武者は、宝を守る為校舎内を徘徊し、その姿を見た者には呪いをかけ地獄へと連れて行く」といったものだった。この噂もいい加減なモノで、何故学校に宝が隠されているのかも、宝が何なのかも、何処に隠されているのかも、何故鎧武者が宝を守る為に毎夜校舎内を徘徊するのかも、何一つちゃんとした理由は説明されていなかった。その話は只、例の油絵から誰かが創り出した、生徒の恐怖心を煽る為だけの代物だった。
「それで松岡、由美はあんたをご指名よ」
綾香の言葉に、松岡が「あぁ?」と怪訝な声をあげた。依羅さんへと視線を投げ、呆れたように肩を竦めてみせる。それを見た佐藤が、ガッカリしたように更に肩を落とした。
「何よ、松岡。その態度は!」
立ち上がった綾香を手を上げて制した依羅さんは、やさしい声を出して佐藤の顔を覗き込んだ。
「しかしですね、子羊。私共はまだ、肝心のご依頼内容を聞いていないのです。どうか順序立てて、お話をお伺い出来ないものでしょうか?」
十歳も年下の少女に話しているとは思えない程丁寧に言った依羅さんに、俺は内心驚いていた。この前の新田の時とは、話し方まで違う。それは松岡も気付いているようで、先程からジッと真剣な眼差しを依羅さんに注いでいた。
「――はい……あ、すみません」
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