56 / 115
黒い幻影
55
しおりを挟む
「……逃げんなよ。死なば諸共だろ。俺を一人にすんじゃねぇ。俺が明日学園休んだら、お前の所為だかんな。行くならせめて、こいつも連れてけ」
恨み言を連発する松岡に、俺は一瞬呆気に取られてから、ハタと気付いてその腕を引き剥がそうともがいた。
「やだよ、俺。無理無理。絶対無理。どー考えても俺の手には負えないもん」
「んなの、俺も一緒だよ! 怒った友也さんとこのハイな綾香に挟まれようモンなら、俺の繊細な心臓が破裂して死ぬかもしんねぇ! そうなったら、お前も迎えに行ってやっからな!」
「えぇっ! 俺、関係ないじゃん」
見苦しい争いを繰り広げる俺達に、綾香は呆れた声で間に入った。
「なに道端でじゃれ合ってんのよ! 時間がないわよ、ほら。――もう! 仕方ないわね」
何を思ったのか、松岡が掴んでないもう一方の俺の腕を掴む。
「早くしないと、遅れちゃうでしょ!」
腕を抱きかかえた綾香が、強い力で引っ張って行く。
「いや、あの俺……」
「はいはい。言いたい事は、『ストレイ・ラム』に着いたらゆっくり聞いてあげるからね。兎に角、今は急ぐの!」
「そうそう」
もう一方の腕を掴んだままの松岡が、ケケッと意地悪く笑う。
「歩き難いんだけど……」
俺の訴えは無視され、どちらの手も緩めてくれない。
横一列に並んだ俺達は、他の通行人に多少の迷惑をかけつつ、三人仲良く喫茶店『ストレイ・ラム』へと向かった。
恨み言を連発する松岡に、俺は一瞬呆気に取られてから、ハタと気付いてその腕を引き剥がそうともがいた。
「やだよ、俺。無理無理。絶対無理。どー考えても俺の手には負えないもん」
「んなの、俺も一緒だよ! 怒った友也さんとこのハイな綾香に挟まれようモンなら、俺の繊細な心臓が破裂して死ぬかもしんねぇ! そうなったら、お前も迎えに行ってやっからな!」
「えぇっ! 俺、関係ないじゃん」
見苦しい争いを繰り広げる俺達に、綾香は呆れた声で間に入った。
「なに道端でじゃれ合ってんのよ! 時間がないわよ、ほら。――もう! 仕方ないわね」
何を思ったのか、松岡が掴んでないもう一方の俺の腕を掴む。
「早くしないと、遅れちゃうでしょ!」
腕を抱きかかえた綾香が、強い力で引っ張って行く。
「いや、あの俺……」
「はいはい。言いたい事は、『ストレイ・ラム』に着いたらゆっくり聞いてあげるからね。兎に角、今は急ぐの!」
「そうそう」
もう一方の腕を掴んだままの松岡が、ケケッと意地悪く笑う。
「歩き難いんだけど……」
俺の訴えは無視され、どちらの手も緩めてくれない。
横一列に並んだ俺達は、他の通行人に多少の迷惑をかけつつ、三人仲良く喫茶店『ストレイ・ラム』へと向かった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
消された過去と消えた宝石
志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。
刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。
後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。
宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。
しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。
しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。
最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。
消えた宝石はどこに?
手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。
他サイトにも掲載しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACの作品を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる