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黒い幻影
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三階建ての寮の前に着くと、俺達は立ち止まり武田の指差す窓を見上げた。
「丁度あの窓辺りに見たんだと思う。顔は確認出来なかったそうだけど、試合用のユニフォームを着てるのははっきりと見えたんだってさ」
その二階の窓を見上げていた松岡は、満足げに頷いた。
「やはり一階じゃなかったか。面白いなぁ。予想通り動いてくれる、ドッペル君だぜ。ちなみにあそこは、何処の窓?」
「廊下」
「廊下の向こう側は?」
「んーっと、階段」
「へぇ」
ククッと笑った松岡は、せかすように武田の背中を押した。
「お前達の部屋に、案内してくれよ」
玄関に入ると、右手に受付の小さな窓があり、そこに置かれたノートに来客者は名前を書くようになっていた。受付の中に座っていたおばさんが、武田に親しげな笑みを浮かべる。
「試合、勝ったんだってねぇ。おめでとう」
それに「ありがとうございます」と答えた武田は、「寮母さんだ」と俺達に紹介してくれた。
少し小太りの人の良さそうなおばさんに、松岡は受付に片肘を乗せ、ぼやくように話しかけた。
「なぁ、おばちゃん。俺さぁ、こいつに二週間くらい前に宅配で荷物送ったんだけどさぁ、届いてねぇって言うんだよ。そんな筈ねぇよなぁ?」
その台詞に驚いたのは、おばちゃんだけではなかった。松岡が武田に会ったのは今日が初めてだし、二週間も前に武田の存在を知っている筈がない。荷物なんて送れる筈もなかった。
顔を見合わせる俺達三人を無視して、松岡は更に言葉を続けた。
「荷物って、一旦おばちゃんが受け取るんだろう? 間違って他の奴に渡しちまったとか、まだ此処に預かったままって事はねぇかなぁ?」
「そんなの、ない筈だけどねぇ。それに、武田君に荷物なんて、ここ一ヶ月くらい届いてないよ」
「えーっ! そんな筈ねぇよ。だって俺、ちゃんと送ったもん。調べてみてよ」
怪訝そうに眉を寄せたおばさんが、後ろの棚の引き出しを開けて宅配伝票を取り出した。ペラペラと一枚ずつ捲って、名前を確かめている。それを待つ松岡は、手持ち無沙汰とでも言いたげに、名前を記入するノートを捲ってはつまらなそうにそれを眺めていた。
「やっぱりないわよ」
「えっ! うそ。なんでぇ?」
まだ疑う松岡の前に伝票の束を置いたおばさんは、ご丁寧にも一枚ずつ捲りながら、松岡に確認させている。
「丁度あの窓辺りに見たんだと思う。顔は確認出来なかったそうだけど、試合用のユニフォームを着てるのははっきりと見えたんだってさ」
その二階の窓を見上げていた松岡は、満足げに頷いた。
「やはり一階じゃなかったか。面白いなぁ。予想通り動いてくれる、ドッペル君だぜ。ちなみにあそこは、何処の窓?」
「廊下」
「廊下の向こう側は?」
「んーっと、階段」
「へぇ」
ククッと笑った松岡は、せかすように武田の背中を押した。
「お前達の部屋に、案内してくれよ」
玄関に入ると、右手に受付の小さな窓があり、そこに置かれたノートに来客者は名前を書くようになっていた。受付の中に座っていたおばさんが、武田に親しげな笑みを浮かべる。
「試合、勝ったんだってねぇ。おめでとう」
それに「ありがとうございます」と答えた武田は、「寮母さんだ」と俺達に紹介してくれた。
少し小太りの人の良さそうなおばさんに、松岡は受付に片肘を乗せ、ぼやくように話しかけた。
「なぁ、おばちゃん。俺さぁ、こいつに二週間くらい前に宅配で荷物送ったんだけどさぁ、届いてねぇって言うんだよ。そんな筈ねぇよなぁ?」
その台詞に驚いたのは、おばちゃんだけではなかった。松岡が武田に会ったのは今日が初めてだし、二週間も前に武田の存在を知っている筈がない。荷物なんて送れる筈もなかった。
顔を見合わせる俺達三人を無視して、松岡は更に言葉を続けた。
「荷物って、一旦おばちゃんが受け取るんだろう? 間違って他の奴に渡しちまったとか、まだ此処に預かったままって事はねぇかなぁ?」
「そんなの、ない筈だけどねぇ。それに、武田君に荷物なんて、ここ一ヶ月くらい届いてないよ」
「えーっ! そんな筈ねぇよ。だって俺、ちゃんと送ったもん。調べてみてよ」
怪訝そうに眉を寄せたおばさんが、後ろの棚の引き出しを開けて宅配伝票を取り出した。ペラペラと一枚ずつ捲って、名前を確かめている。それを待つ松岡は、手持ち無沙汰とでも言いたげに、名前を記入するノートを捲ってはつまらなそうにそれを眺めていた。
「やっぱりないわよ」
「えっ! うそ。なんでぇ?」
まだ疑う松岡の前に伝票の束を置いたおばさんは、ご丁寧にも一枚ずつ捲りながら、松岡に確認させている。
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