キミの次に愛してる

Motoki

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 不思議だな、と思う。


 卒業式は、自分が卒業する訳ではなくてもなんだか寂しさが漂ってしまう。そして同時に、澄み渡る青空のような、晴れやかな気持ちにも、してくれるのだ。




「卒業おめでとうございます。如月先輩」

 僕の言葉に「ありがとな」と先輩が笑う。

 如月先輩は中学の頃から知っている先輩で、姉さんが亡くなって僕がテニス部を辞めるとなった時も、とても残念がってくれた部活の先輩だった。

 あの頃は、部活どころか何もやる気が起きなくて……。裕文さんを心配させない為に高校には登校していたけれど、授業の内容も全然頭になんか入ってきてくれなかった。

 先輩は、僕がテニス部を辞めた後も時折教室に様子を見に来てくれて、廊下で会ったら声をかけてくれて。



 学校では友達と同じように、僕を支えてくれた人だった。



「それで、これ……」

 僕は用意していた花束を先輩に渡す。

 少し恥ずかしいから、校舎の裏でコッソリだ。

「おぉ~、スッゲ! 花束なんて貰うの初めてだ!!」

 俺には可愛い過ぎないかー、なんて笑いながら、受け取ってくれた。

「すみません。呼び止めたりしちゃって。先輩のお友達みんな、先帰ってしまいましたね」

「ん? あぁ、先行ってるだけだから全然オッケー。これからカラオケなんだ」

 人懐っこい笑顔を浮かべた先輩は、「それに」と首を傾げるようにして僕を見た。

「お前が呼び止めてくれなかったら、俺の方から呼び出そうと思ってたし?」

「えっ、そうなんですか」

 なんですか、と言った僕に、先輩は「俺、遠くの大学に行くからさ」と微笑む。

「そうですか……。寂しくなります」

「判んないけど。そのまま俺、こっちには戻って来る気ないから。最後に言っとこうかな、と思って」

「え……。それって――」



 ――もう2度と、会えないってこと?



 自分が、なんだか泣きそうになっているのが判る。

 目の前には、姉さんの姿がチラチラと浮かんでいた。



 僕の様子に困ったような笑みを浮かべた先輩は、「そう言や」と顔を横に向ける。

「この前、浩次を駅前で見たよ。大人の男と一緒だった。――優しそうなヒト」

「あ…………」



 ――裕文さんだ。

 この前の帰り、2人で駅前に寄ったから。



「あの人は……」

 義兄だと説明しようとした僕に、先輩は困った表情のまま、顔を戻す。

 そうして「彼が」と言った。

「彼が、以前お前が言ってた『姉さんの旦那』さん?」

「そうです。僕を本当の弟のように思ってるって、言ってくれた人なんです」

「本当の弟?」

 嬉しさを含んで言った僕に、ハッと先輩が笑いを吐いた。
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