キミの次に愛してる

Motoki

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「ただいま」

「あ、おかえりなさい」



 仕事から帰って来ると義兄は、キッチンに居る僕に真っ先に声をかけてくれる。

 僕に笑顔を向けるとそのまま、奥にある和室に行くのだ。

 すぐに聞こえてくる、仏壇のおりんの音。

 まるで姉さんと会話をしているかのように、しばらくは何の物音もしない。

 そうしてしばらくすると自室に入る気配がして、 背広からラフな服装に着替えた義兄が、リビングへと入って来る。

「これ。今月のお給料。ここに置いておくね」

「今月もお疲れ様でした」

 銀行の封筒に入ったお給料を、リビングのテーブルの上へと置いてくれる。

 毎月二十五日に振り込まれているから引き出してくれて構わない、と以前に言ってくれたけれど。そんな訳にいかない。

 なんだか義兄のプライバシーにズカズカと入り込んで行くみたいで、どうしても出来なかった。




 料理をテーブルへと僕が並べていくと、「美味しそうだね」と義兄が言ってくれる。

 そして食事をしながらも、

「美味い」

 と必ず褒めてくれるのだ。

 毎晩それが続くものだから、なんだか僕の方が照れてしまう。

 だって本当は、姉さんが作った料理の方が何倍も美味しかったに決まっているのだから。 

「そろそろ僕も、バイトくらいしようかな……」

 ぽつりと呟けば、義兄がピタリと箸を止めた。

「えっ。ウチってそんなに家計大変だったの?」

 ああー俺そういうの無頓着だからなぁー、とこめかみを掻いている。

 ごめんね、と謝りかねない義兄に、慌てて首を横に振った。

「いえそんな……。充分入れてもらってます」

「なら。そんな事言わないでよ。来年は受験だから、勉強も忙しくなっちゃうし」

 ああでも忙しくなってもご飯は作ってほしいなぁー、と甘えたように言う義兄の姿に、思わず笑ってしまう。

「大丈夫。高三になっても、ご飯くらい作りますよ」



 僕が十歳の時に、両親が交通事故で亡くなった。

 それからは、八歳年上の姉が一人で僕を育ててくれた。



 そんな姉の結婚相手への条件は、「弟と同居してくれる人」で。学生の頃から付き合っていたカレは、その条件が負担だと、プロポーズまでしていたくせに姉から離れていった。

 優しくて、弟の僕が言うのもなんだけど、美人だった姉の前には、恋人候補者が跡を絶たなかった。

 それでも僕を「養ってもいい」と言ってくれる人は、全然現れなかった。

 そんな姉が、二年前にやっと結婚して。

 相手は、裕文さんみたいな随分なお人好しで。
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