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4.カチ割りジョッキスパーリング1杯っ

酒を呑めば実力の150%を出せるのですが

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何で私はここに居るのだろう・・・?


「カシス様、何度言えばいいのですか? ここのステップは右足が先です!」

かれこれ今日のところは50回はダンスの先生の足を踏んでいるな・・・。


「カシス様、先週学習されたばかりのところでしょう? 何で間違えるのですか?」

すいませんね、昨日教わったところも怪しいですよ・・・。


教師陣は皆、溜息まじりに私に言う。


「「こんなことでは立派な皇太子妃になれませんよっ!!」」


なる気は全く有りませんっ!!!


第一王子の婚約者になってしまった日から、私の地獄のお妃教育漬けの日々が始まった。

週5日、朝7時に叩き起こされ、メアリーに馬車に詰め込まれ王宮に通う。
朝から夕方までみっちり、ダンスに、マナー、歴史、語学、政治など王族の妻として恥ずかしく無いようにと色々な教育を受ける。

やる気が全く無い私は全てにおいて出来がすこぶる悪い。
常に教師陣から怒られてばかりだ。


毎日私の様子を見に来る(冷やかしに来る)ギムレットに恨み言を言い、開放してくれと懇願するが笑顔で却下されるのが恒例となっている。

仕返しにたまに一緒のダンスの練習の際、ワザと思いっきり足を踏んでやろうとするが、うまく避けられ、成功したためしがまだ無い。


くぅっ、憎いっ。こんな苦行を強いてくるギムレットが憎いっ!!!




今日はこれから語学の授業である。一番苦手な授業だ。

足を引き摺りながら語学の先生の元へ行くと、そこには第二王子マティーニの姿があった。

コバルトブルーの瞳にプラチナゴールドの髪。物語に出てきそうな王子様。
端整な顔立ちで明るい彼の周りには、常に取り巻きがいて賑やかであった。

王宮に通うようになり、何度かその姿を見かけたが、自分から破滅フラグを立てることも無いので彼らに見つからぬようにこれまで過ごしてきた。

しかしどんなに王宮が広かろと、こういつも王宮に通っていればいつまでも逃げ回れるわけが無い。
今日が年貢の納め時ということか。。。


覚悟を決めて私は部屋に入り、挨拶をした。

「この度はお初にお目にかかります。コアントロー侯爵家、長女のカシス・コアントローと申します。以後お見知りおきを。」

マティーニはジロジロとカシスを品定めするように見た後、挨拶を返した。

「第二王子のマティーニだ。こちらこそよろしく頼むぞ。」



一応マティーニと初めて挨拶わした晩、夕方家に帰るなりキールにその日の報告をし、早速『マティーニ対策会議』を行った。

まず『おつ糸黙示録』を広げる。


第二王子はと・・・・

ー+ー+ー+ー+ー
=『おつ糸黙示録』=
P12
第二王子『マティーニ』。

第二王子で正妃の息子。
とても社交的で皆に親しまれる性格をしている上、正妃の一人息子ということで彼を皇太子にという声が多い。

そんな周りから愛され慕われているマティーニだが、何事にも優秀な第一王子ギムレットに強い劣等感を抱いている。
皇太子という座に対しては、優秀な第一王子が就くものだと自己完結をしていて全く意識をしていない。

第一王子、第二王子、どちらが皇太子となるのか決まっていない状況の中、皇太子妃を狙っているカシスは第一王子の婚約者という立場にもかかわらず、第二王子のマティーニにも度々色目を使う。
そんなカシスにマティーニは心底嫌悪感を感じている。

やがて主人公に出会い、健気な主人公を自分が幸せにしたいという考えを抱くようになっていき、これまで目を背けてきた皇太子の座も視野に入れるようになる。

第二王子の場合もGOOD EDを迎えた際は、主人公と結婚すると共に皇太子の座に就く。

ー+ー+ー+ー+ー

ふむ。

「これって私がマティーニにちょっかいを出さずに過ごし、主人公が出てきても主人公にもちょっかいを出さなければ大丈夫じゃない?」

今日の挨拶後、マティーニとは特にお互い絡むことは無く別れた。

「今日の状況を聞く限りそうですね。引き続きその状況の維持を努めて下さい。」

キールも私の意見に同意しつつ、しかしくれぐれも油断はしないようにと釘を刺して会議は終わった。


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