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2.レモンハイくださぃ

2次会の会費は3千5百円

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美少年から向けられた笑顔に赤面しつつ私はその少年に注目した。

ふむ、歳の割になかなかしっかりした子ね。
でもなんかこの子の顔、見覚えがあるような・・・。

私はしげしげとキールと名乗る少年の顔を見つめた。


ほらっ、常日頃顔を合わせていたアイツ、そうアイツ。えーと、出てこない。

あとちょっとのところで思い出すことが出来ず、悶々としている私を置いて、お母様、お父様はそれぞれのお部屋に、使用人達は各自の持ち場に戻っていく。

そんなカシスの耳元にそっとキールが囁いた。


「先輩、2次会の会費まだ未払いですよ。」



!!!!!

そうだ、思い出した。。。彼は・・・


キールはカシスが明らかにキールが誰なのか思い出した顔をしたことを確認して、ニッコリ微笑み続けて言った。

「1人3千5百円です。僕のお祝いということなので、1次会同様僕の分は奢りということでいいんですよね。」

歳はずいぶん幼くなり、顔は少々変わっているものの、間違えなく前世で、真澄が亡くなった日に酒を飲み交わしていた後輩のダニエルだった。

そう、あの日はアメリカ本社から2年前に新製品の開発にダニエルが日本に来てから、一緒に試行錯誤し、やっとの思いで製品リリースまでこぎつけた打ち上げだった。
始めは設計の『せ』の字もわかっていなかったダニエルに全身全霊で1から設計を教え込んだ。始発出勤、終電帰宅がざらにあった。休日出勤も何度もあった。

亡くなるまでの2年間はほぼ毎日ダニエルと1日中顔を合わせていた。


「・・・ダニエル・・、こんなに小さくなって・・・。」

私は感傷深くキールの手に自分の手を重ねた。

「先輩こそ大夫外観が変わりましたね。でもどことなく先輩の面影があったのでわかりました。」

「ここで出会えたのもきっと運命ね。私の部屋でちょっと積もる話でもしない?」

「そうですね、是非。」


私達は私カシスの部屋へ移動した。部屋に移動するがてらにメアリーにいつものアレを2人分持って来てもらえるようお願いをする。

部屋に入って間もなくして、メアリーがいつものアレを持って来てくれた。

「さぁ、ダニエル、いえ、キール。2人の再会を祝して乾杯をしましょう。」

私達はいつものアレで乾杯をした。


「っぷはぁっ!」

私はオヤジっぽく一気に飲み干し、手の甲で口を拭った。


「っあ、レモンハイっぽい味がする!」

キールより驚きの声が上がる。

「でしょう、でしょう。私はこれを『レモンハイもどき』と呼んでいる。」

誇らしげに胸を張る私を見て、キールは吹き出した。

「あはははは、転生をして、こんな世界でもお酒。先輩は相変わらずだなぁ。いつもの先輩で安心しました。あ、もう先輩ではなくカシスお姉様でしたね。」

キールは一頻り笑った後、急に真面目な顔になりカシスの手を握り言った。


「僕、どうしてもお姉様に伝えないといけないことがあるのです。」

「え?」

「これはお姉様の未来にとても大切なことなのです。」


私の未来にとても大切なこと・・・?
私の・・・・大切・・・・

・・・・さ・・


「酒のことではありません!」

まだ口に出していないのに、キールに先に否定されてしまった。


「先ぱ・・、お姉様の考えている事は大体想像がつきます。僕が伝えたいことはそんな話では無く、お姉様の生死に関わる話なのです。」


お酒は私にとって生死に関わるほどのプライオリティが高いことなのだが、そのお酒を『そんな』で片付けられてしまえるほど重要な話とは。。。。

  
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