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17「オカルト大好きおタエさん」

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「もう、おそいよひどいよ。なんでおいてくのさ!」

 カオルは動き出した途端に大声で叫んだ。

「あの状況では仕方なかったんだよ。ごめんな、カオル」

「それでも、それでも!暗闇の中にたった一人おいていかれる私を想像してみて?かわいそうだと思わない?しかも動けないんだよ、怖いよ!」

「だからごめんって」

「ダメだね無理だね許せないね。どうしても許して欲しいなら、何かいいものちょうだい」

「いいものってなんだよ」

「そうね……。ご主人様の精液十回分とか」

「なっ」

 精液十回分って、十回セックスしろってことか?

「ちょっとカオル、それはダメよ。ダメ。だって私が欲しいもの」

 キャサリンがカオルを睨みつける。ぼくの精液ってそんなに欲しいものなのか?

「むう。それかお金かな~。給料アップして欲しいかも~」

「考えておくよ……。とりあえずさっきの広場に戻ろう」

「お~」



 広場に着くと、さっきまで誰もいなかったのに今はそうではなかった。
 そこには影がいた。
 黒い、ぼんやりした物体が動いている。それは人間くらいの大きさで、顔の位置には目らしきものが光っている。 
 生き物だろうか。

「なんですかこれは……。幽霊?おばけ?亡霊?すごいですね。僕、オカルトって大好きなんです」

 それは意外だ。タエの趣味とかよくわからないからな。いや、それは他の二人も同じだけど……。

「なんだろう、UMAかな。大鯨くんの中に生息する未発見の生物?いやー、ワクワクするなあ!」

 タエが興奮している……。いつもは物静かなだけに、そのギャップが激しい。気のせいか顔が火照っている。
「接触を試みます!」

 タエは黒い影のようなものに猛烈アタックしていった。いつも消極的なのに、こういう時は積極的なんだなあ。好きなものにかける情熱がすごい。
 遠くからタエを見守る。影に話しかけている。言葉が通じるのか……?あ、帰ってきた。

「クリス君……。わ、私、感激して泣いちゃいそうです。会話できました。未知の生命体と!バンザイ!」

「それは良かったね……。で、彼らはなんていってたの?」

「そうですね、彼らは大鯨くんに食べられてしまった、哀れな魔物や人間の末路。いわゆる幽霊のようです」

「へえ~。……ええ~!?」

「どうしたの?」

 キャサリンとカオルが集まってきた。今聞いた話を二人に聞かせる。

「それは……。まずいわね。このままでは私たちもここの住人ということかしら?」

「え~!それはいやだよ~。お金もらっても使えないじゃん!」

 ふーむ。どうしよう。ここから出られないだろうか。船は壊れてしまったようだし……。

「ふふん、ここは僕にお任せあれ」

 いつも周りに無関心なのに、今はとても積極的なタエであった。
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