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15「大鯨くんに飲まれちゃった」

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「何、鯨だって?」

「ええ、それはもう超巨大な」

「くじら~。って、なに?」

「カオル、鯨も知らないの?」

 にわかに騒がしくなる船内。ここはリーダーであるぼくがまとめるべきだろう。

「よし、とりあえず見にいってみよう」

「おー」

「ええ」

「……」

 なんだか気が抜ける返事……。

 甲板の上は強い風が吹いていた。遠くを見やると、なんだか本当に超巨大な黒い物体があった。
 怖い。
 怖い怖い怖い。なにあれ。ぼくの知っている鯨じゃない。大きすぎる。だいたい本当に鯨か?小さな島じゃないのか?どこを見て鯨って判断したんだ、タエのやつ。

「なあタエ、あれって島じゃ……」

「違います。あれは鯨。この辺一帯の主。大鯨くんです」

 大鯨くん……。

「有名ね。噂じゃ船を飲み込んでしまうらしいわ」

「え~。こわ~い、助けて、リーダー」

 ぼくの腕に抱きつくカオルをきっ、と睨みつけるキャサリン。タエはこっちを振り向くこともない。

「……まずいですね。大鯨くんがこっちに泳いできました」

「え」

「え」

「え~!」

 ちょっとちょっと、それは本当にまずくないか?船を飲み込むって、この船も?やばい、最初のミッションから失敗するのか。そして短い一生を終えるのか……。
 いやだ。
 ぼくは力の限り叫んだ。

「タエッ!結界、船全体に最高の力で頼む!」

「アイアイサーです。キャプテン」

 巨大な鯨が迫ってくる。大きな口を開けて、僕たちは大量の海水とともにその中に吸い込まれる……。



 うん……。なんだここは。くらい。真っ暗だ。そして物音ひとつしない。
 さっき鯨に飲み込まれて、そして……。どうなったんだ?

「ちょっと~。ココドコ~?なにも見えないよ~」

 カオル。真っ暗でなにも見えないが、今の声は確かにカオルだ。

「おーい、カオル、こっちだ。クリスだよ」

「お~。クリスくん。どこ~。真っ暗だよ~」

「こっちこっち」

 うーん、どうしよう。これでは埒が明かない。明かりがなくては……。そうだ。ぼくは魔法のライターを持っていたんだ。
 カチッ
 ライターに火を灯す。あたりが明るくなってきて、どんな様子かがわかってくる。
 カオルは……。動かなくなっている。そうだった。このライターをつけると、動きが止まるんだった。仕方ない、とりあえずカオルはそのままにしておいて……。
 ここはどうなっているんだ?
 床には弾力があって、生物の血管みたいなものが走っている。赤黒い。所々に出っ張っているところがある。骨だろうか。壁も床と似たような感じだ。天井は結構遠い。高さがある。なんだか全体的に動いている。呼吸しているのか?
 多分ここは鯨の腹の中だろう。少なくとも鯨の体の中の何処かにいる。
 どうやら結界の術で守られたようだ。
 タエに感謝だ。
 さて、と……。

「どうしようかなあ、これ」

 カオルを動かすと明かりが消える。

「仕方ない。後からまた戻ってくるから、それまで待っててくれ、カオル」

 とりあえずそう言い残して、ぼくは奥へ進んでいった。
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