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070.錆
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顔にうろこができた。最初、薬にでもかぶれたのかと思ってほおっておいたがどんどん広がってくる。左ほお全体に青色のうろこが覆ってしまって、私は病院に行った。人医では管轄外と言われた。
私は人間ではなく機械だったのだ。
思えば、今まで健康体で病院にいったこと一度もなく、会社で一斉に受けた健康診断ではA判定の問題なしとされていた。生活は会社から部屋を与えられおり、同僚は同じ生活をする。私が、自分を機械だと認識したのはこれが初めての事だった。
頬のうろこは錆と言うらしく。清掃の仕事の、水仕事が多いことが原因だろうと診断された。また、特区の怪異にも晒されている。複合的な事情で発生している頬の錆は広がるばかりで、消し去る方法は今のところ見つからない。
会社からの補償はなく、広がって機能しなくなればスクラップにとなる旨を宣告された。
会社から簡単に私を消し去るのと同じように、私の頬を汚す青い鱗を落とす方法があればいいのに……、そう思いながら出勤する。
ある日、同僚が『直し屋』の存在を教えてくれた。病院ではない。人工物専門でもない。怪異と呪い、不可思議な現象が起こる特区の事象に介入する、魔法使いのいる店だという。
既に、錆は顔の半分を覆っている。
このままスクラップになるのは嫌だった。休みなく働くほど仕事が好きだ、と思うのは自分がそのために生み出された機械だからかもしれない。しかし、私は人が喜ぶ顔が好きだった。清掃業での僕の役割は人を危険に晒さないこと。頑丈で、何にも負けない私の身体は生物が入りこめない危険地帯にも負けない身体だ。私はそのために生み出されたのだ
使い方も知らなかった有給はたっぷりと残っている。機会が休みを取ることなど、これが初めてに違いない。呆気にとられた人間の上司の顔を背に、西へと向かう。
このままの姿では直せないだろうという見解だった。信用できそうな、ごつごつと傷の多い手で私のうろこに触れる。その指には呪術バリアが張られており、錆の内部に巣くう怪異を暴いていく。
「君の錆には呪いがかかっている。それと、頬の代替え品がない」
直し屋が提案した方法は二つ。
今まで通り清掃業務を続けることはできるが、身体が脆弱になるため、危険地帯の仕事はできなくなる。
もう一つは、今まで通り危険地帯でも仕事はできるが人間の姿は失う事だった。
悩んだ末に、新しい身体を得た。
「前よりカッコいいじゃん」
同僚が言う。
僕は新しく重たい金属の身体を得ていた。その身体を同僚に引かれて、私は現場に向かっている。
こうやって、人に頼らないと仕事はできなくなった。でも、今まで通り、危険な場所に赴いて職員の補助はできる。
私は仕事が好きだ。人間と一緒に仕事をするのも、誰かのために身体を張るのも。
私は人間ではなく機械だったのだ。
思えば、今まで健康体で病院にいったこと一度もなく、会社で一斉に受けた健康診断ではA判定の問題なしとされていた。生活は会社から部屋を与えられおり、同僚は同じ生活をする。私が、自分を機械だと認識したのはこれが初めての事だった。
頬のうろこは錆と言うらしく。清掃の仕事の、水仕事が多いことが原因だろうと診断された。また、特区の怪異にも晒されている。複合的な事情で発生している頬の錆は広がるばかりで、消し去る方法は今のところ見つからない。
会社からの補償はなく、広がって機能しなくなればスクラップにとなる旨を宣告された。
会社から簡単に私を消し去るのと同じように、私の頬を汚す青い鱗を落とす方法があればいいのに……、そう思いながら出勤する。
ある日、同僚が『直し屋』の存在を教えてくれた。病院ではない。人工物専門でもない。怪異と呪い、不可思議な現象が起こる特区の事象に介入する、魔法使いのいる店だという。
既に、錆は顔の半分を覆っている。
このままスクラップになるのは嫌だった。休みなく働くほど仕事が好きだ、と思うのは自分がそのために生み出された機械だからかもしれない。しかし、私は人が喜ぶ顔が好きだった。清掃業での僕の役割は人を危険に晒さないこと。頑丈で、何にも負けない私の身体は生物が入りこめない危険地帯にも負けない身体だ。私はそのために生み出されたのだ
使い方も知らなかった有給はたっぷりと残っている。機会が休みを取ることなど、これが初めてに違いない。呆気にとられた人間の上司の顔を背に、西へと向かう。
このままの姿では直せないだろうという見解だった。信用できそうな、ごつごつと傷の多い手で私のうろこに触れる。その指には呪術バリアが張られており、錆の内部に巣くう怪異を暴いていく。
「君の錆には呪いがかかっている。それと、頬の代替え品がない」
直し屋が提案した方法は二つ。
今まで通り清掃業務を続けることはできるが、身体が脆弱になるため、危険地帯の仕事はできなくなる。
もう一つは、今まで通り危険地帯でも仕事はできるが人間の姿は失う事だった。
悩んだ末に、新しい身体を得た。
「前よりカッコいいじゃん」
同僚が言う。
僕は新しく重たい金属の身体を得ていた。その身体を同僚に引かれて、私は現場に向かっている。
こうやって、人に頼らないと仕事はできなくなった。でも、今まで通り、危険な場所に赴いて職員の補助はできる。
私は仕事が好きだ。人間と一緒に仕事をするのも、誰かのために身体を張るのも。
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