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092. いつか
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今日は空き地にあるものを全て壊す日だったらしい。空き地の隅に崩れた砂が山のようになっていた。
「また、派手に壊したな……」
「壊した」
瓦礫の山を壊し終えて飽きが来たのか少女がその場に座り込んでいた。保護者が購入したであろうレースのついたワンピースが無惨にも土埃で汚れていた。少女は意にも介さず、無表情で近寄ってくるマナブを見つめていた。今日も薄桃色の瞳で壊れていく瓦礫を眺めていたのかと思うと恐ろしいものがある。
「お前、壊す以外に何か遊びないの?」
インテリタスが眉を顰めた。壊す以外の行動ができない存在にとってマナブの問いかけは未知の言葉だった。
「壊さない……」
マナブが砂山と化した空き地を眺める。良いことをおもいついた、と言うように砂遊びするぞ、とインテリタスを誘った。
「作っても壊せるし、壊しても直せるからな」
「壊れてもいい」
「なるべく壊すなよ」
マナブがその手から水を生み出して砂をこねる。あっという間にその手につるつると光る泥団子が出来上がった。その球体を見て、初めて砂遊びに興味を持ったようで、マナブに近づく。じっと砂の塊を眺め、感嘆するようにため息を吐いた。
「綺麗」
「お前はこれ作れるように練習して」
インテリタスが拙い手つきで泥団子を作る。途中その手に水を足してやりながら、マナブは砂で城を作っていた。先ほどの泥団子に魅入られているようなインテリタスの表情をもう一度見たい。
インテリタスが光る泥団子とは程遠い球体を差し出したとき、マナブは正反対にしっかりとした砂の城を作り上げていた。
「綺麗な山」
「山じゃない。お城だよ」
「お城?」
特区には城はない。城のような建物もない。インテリタスは直し屋の周辺から出歩いたことがない。マナブが作り上げたものの正体を知らないのだろう。
「お城の中には王様とお妃さまとお姫様が住んでてさ、」
「王様とお妃さまとお姫様?」
何それ、みたいな呆けた表情で聞き返すインテリタスに、マナブが笑う。
「お姫様はな、お前みたいにお城から出ないけど、王子様とダンスを踊って、幸せに暮らすのさ」
「また、派手に壊したな……」
「壊した」
瓦礫の山を壊し終えて飽きが来たのか少女がその場に座り込んでいた。保護者が購入したであろうレースのついたワンピースが無惨にも土埃で汚れていた。少女は意にも介さず、無表情で近寄ってくるマナブを見つめていた。今日も薄桃色の瞳で壊れていく瓦礫を眺めていたのかと思うと恐ろしいものがある。
「お前、壊す以外に何か遊びないの?」
インテリタスが眉を顰めた。壊す以外の行動ができない存在にとってマナブの問いかけは未知の言葉だった。
「壊さない……」
マナブが砂山と化した空き地を眺める。良いことをおもいついた、と言うように砂遊びするぞ、とインテリタスを誘った。
「作っても壊せるし、壊しても直せるからな」
「壊れてもいい」
「なるべく壊すなよ」
マナブがその手から水を生み出して砂をこねる。あっという間にその手につるつると光る泥団子が出来上がった。その球体を見て、初めて砂遊びに興味を持ったようで、マナブに近づく。じっと砂の塊を眺め、感嘆するようにため息を吐いた。
「綺麗」
「お前はこれ作れるように練習して」
インテリタスが拙い手つきで泥団子を作る。途中その手に水を足してやりながら、マナブは砂で城を作っていた。先ほどの泥団子に魅入られているようなインテリタスの表情をもう一度見たい。
インテリタスが光る泥団子とは程遠い球体を差し出したとき、マナブは正反対にしっかりとした砂の城を作り上げていた。
「綺麗な山」
「山じゃない。お城だよ」
「お城?」
特区には城はない。城のような建物もない。インテリタスは直し屋の周辺から出歩いたことがない。マナブが作り上げたものの正体を知らないのだろう。
「お城の中には王様とお妃さまとお姫様が住んでてさ、」
「王様とお妃さまとお姫様?」
何それ、みたいな呆けた表情で聞き返すインテリタスに、マナブが笑う。
「お姫様はな、お前みたいにお城から出ないけど、王子様とダンスを踊って、幸せに暮らすのさ」
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