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010. 歪
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小さなころから何かを作るのが好きだった。図画工作創意工夫の授業が大好きで、チャイムが鳴るのも構いなく好き勝手に何かを作っては教師にため息を吐かせていた。
進学してからは技術増進の授業に執心した。最初はパッケージに忠実に作っていた作品はいつしか改造されて、複数の機能を持つものに変化した。
切り貼りして形になった時の達成感が好きだった。
自宅では壊れた物を分解して構造を知ることに夢中だった。物の修理が得意になった。なにか生み出すこと、何かを直すこと、それらが組み合わさり、特区という環境で変異し、魔法陣ノ目という人間を作り出した。
初めて、猫を直したとき、両親が渋い顔をした。
猫だったものはちゃんと四つ足で歩いていたにもかかわらず、その首は悪戯した犯人に持ち去られてしまったようで、代わりに陣ノ目が作り出した木の首が据えられており、声帯のない猫は首に電子工作で作ったスピーカーを付けざるを得なくなった。
両親に秘密裏に処分されそうになった猫を懐に隠して夜道を走る。逢魔が時は別の世界への入り口だ。すれ違う怪異や化け物の影とすれ違い、身震いする。夜の住人達から隠れるように路地の脇のドラム缶の影に隠れた。
いつの間にか腕の中の猫は息絶えている。今まで二人だったのが急に一人になる。死が笑っているのを感じた。
「陣ノ目」
ふいに少女が名前を呼んだ。
手を差し出したのは幼馴染だった。くせ毛を爆発させたシルエットでそれとすぐにわかる。
「迎えに来た」
抑揚がない声はいつものことで、それでも陣ノ目を元気づけようと言葉を紡ぐ。
「おじさんもおばさんも心配してたよ」
「それは、俺が猫を直したこと?」
陣ノ目の問いに首を横に振った。
「あなたが夕方から出ていっちゃったことに決まっているでしょ」
進学してからは技術増進の授業に執心した。最初はパッケージに忠実に作っていた作品はいつしか改造されて、複数の機能を持つものに変化した。
切り貼りして形になった時の達成感が好きだった。
自宅では壊れた物を分解して構造を知ることに夢中だった。物の修理が得意になった。なにか生み出すこと、何かを直すこと、それらが組み合わさり、特区という環境で変異し、魔法陣ノ目という人間を作り出した。
初めて、猫を直したとき、両親が渋い顔をした。
猫だったものはちゃんと四つ足で歩いていたにもかかわらず、その首は悪戯した犯人に持ち去られてしまったようで、代わりに陣ノ目が作り出した木の首が据えられており、声帯のない猫は首に電子工作で作ったスピーカーを付けざるを得なくなった。
両親に秘密裏に処分されそうになった猫を懐に隠して夜道を走る。逢魔が時は別の世界への入り口だ。すれ違う怪異や化け物の影とすれ違い、身震いする。夜の住人達から隠れるように路地の脇のドラム缶の影に隠れた。
いつの間にか腕の中の猫は息絶えている。今まで二人だったのが急に一人になる。死が笑っているのを感じた。
「陣ノ目」
ふいに少女が名前を呼んだ。
手を差し出したのは幼馴染だった。くせ毛を爆発させたシルエットでそれとすぐにわかる。
「迎えに来た」
抑揚がない声はいつものことで、それでも陣ノ目を元気づけようと言葉を紡ぐ。
「おじさんもおばさんも心配してたよ」
「それは、俺が猫を直したこと?」
陣ノ目の問いに首を横に振った。
「あなたが夕方から出ていっちゃったことに決まっているでしょ」
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