64 / 78
第3章 強縁編(回帰)
幼刀逆薙
しおりを挟む強い発光が収まった先の光景を前にした一同、皆揃って言葉を失っていた。
「「「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」
───目を開けると、そこには全裸の幼女が座ってました★
想像の遙か左斜め上を行く奇妙キテレツな状況。洋斗はもちろん、ユリア、鈴麗、佐久間先生までもが目を点にして、大人しくぺたんこ座りしている幼女を見ている。
対して幼女の方はうまく状況が飲み込めていないのか、自分の手を眺めたり、顔やお腹をペタペタ触ったりしている。
「………桐崎君…あなたは…一体何を頭に浮かべたんですか?」
「いえ、『おまえの好きな形に変わってくれ』って念じたら、その………こうなりました」
「ま、まさかアンタって………ロリコン?」
「そんな、ロリコンだなんて………って何ですか?」
「ンな訳あるか!?こっちだって何がなんだかサッパリなんだよ!あとユリアは知りもしないでノって来るんじゃない!どうなってんですか先生!!」
「桐崎君がロリコンである可能性も否めませんが………何か人型になりたい理由があったのかも知れません。これまで色んな具現を見ましたが…人型は始めて見たので何とも言えませんが。その…………直接聞いてみては?」
「でもこの子、話せるんでしょうか?」
「「「…………………………………………」」」
───その時
辺りを見回していた幼女がふるふると震え始め、
「……………………………や」
何かを呟いた。
「「「ん??」」」
何だ?と聞き耳を立てる一同。
だが、そのせいで、
「やったーーーーーですーーーーっ!!」
「「「!?!?」」」
幼女の突然の叫びにビクゥ!と身体を振るわせることとなった。
「刀に生まれ落ち、いや打たれ落ちて早九世紀と余年、よもや人の器を得るという祈願が叶う日が来ようとは思わなんだです!」
溢れ出る歓喜からなのかぴょんぴょんと跳ね回ったり、
「これで人様が食している物も食べ放題です。ウププ………」
口を押さえてニヤけたりしている。
やがて、
「他にもあんな事やこんな事を………はっ!?」
こちらの方を見て硬直する幼女。ようやくこちらの存在に気づいたようだ。すぐに正座状態になって姿勢を正し、こちらに向き直る。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ないです!私、刀匠・三条 宗近に打たれし刀剣、黒刀・逆薙と申しますです」
刀相手に自己紹介されてしまった。
「ふ、ふつつかものですが、今後ともよろしくお願いしますです、主様!」
「ややこしいからその言い方止めろ…………あるじさま?」
おまけにヘンな呼ばれ方である。
「あるじさま、ってなんだ?」
「?あるじさまは主様です」
何を今更、という顔をされてしまった。だがその目はバッチリと洋斗の顔をとらえている。やはり俺のことを言っているらしい───と洋斗は腹をくくった上で、とりあえず頼みごとをしてみる。
「その『主様』ってのどうにか出来ないか?なんかむず痒いんだけど」
「そう言われましても………………では、『ご主人サマ』?」
「却下」
「うーんと、『殿下』?」
「却下」
「……………『あなた』?」
「却下だ」
「………………………………『ダーリン』?」
「…………………………………もういいよ、主様で」
とりあえず、俺の呼称は決まった。だがここで洋斗は気づく。
自分が、『全裸』の『幼女』に『正座』をさせ、その上『ダーリン』とまで言わせていることに。
………………もう、犯罪臭しかしない。
「と、とりあえず着れそうな服探すか」
~~~~~~~~~~~~~~~
「なるほど、これが『ユカタ』というヤツです?」
今、幼女が着ているのは子供用の浴衣である。近所の商店街にあったもので、夏のシーズンに売れ残ったものが店頭に安く並んでいたのだ。
「えっと、逆薙さん、着心地はどうですか?」
ユリアが着付け、様子をうかがう。
「ふんふん、悪くないです。むしろ良いです!」
これは浴衣の裾が膝上までしかないタイプのもので、色は紺色である。なので浴衣からすらっと伸びる健康的な二本の足がなお一層白く見えた。
逆薙は大きな鏡の前でくるりと一回転する。それに合わせて浴衣の袖が翻って舞った。
「ですが、『逆薙さん』という呼ばれ方は気に食わんのです!他人行儀なのです!」
「うーん、それなら…………………『ナギちゃん』なんてどうでしょうか?」
「『ナギ』…………………………~~~~~~~っ!!」
ユリアが咄嗟につけた名前を一人呟いて、表情がパーッと明るくなる、黒刀・逆薙改めナギちゃん。どうやら気に入ったらしい。
「ユリア」
「はい?」
「また居候が増えそうなんだけど…………」
「ふふっ。叔父様に相談してみますね!」
その要求が通らないはずもなく、ユリアの邸宅に居候が一人増えることとなった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる