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第3章 強縁編(回帰)

幼刀逆薙

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強い発光が収まった先の光景を前にした一同、皆揃って言葉を失っていた。

「「「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」

 ───目を開けると、そこには全裸の幼女が座ってました★

 想像の遙か左斜め上を行く奇妙キテレツな状況。洋斗はもちろん、ユリア、鈴麗、佐久間先生までもが目を点にして、大人しくぺたんこ座りしている幼女を見ている。
 対して幼女の方はうまく状況が飲み込めていないのか、自分の手を眺めたり、顔やお腹をペタペタ触ったりしている。

「………桐崎君…あなたは…一体何を頭に浮かべたんですか?」
「いえ、『おまえの好きな形に変わってくれ』って念じたら、その………こうなりました」
「ま、まさかアンタって………ロリコン?」
「そんな、ロリコンだなんて………って何ですか?」
「ンな訳あるか!?こっちだって何がなんだかサッパリなんだよ!あとユリアは知りもしないでノって来るんじゃない!どうなってんですか先生!!」
「桐崎君がロリコンである可能性も否めませんが………何か人型になりたい理由があったのかも知れません。これまで色んな具現を見ましたが…人型は始めて見たので何とも言えませんが。その…………直接聞いてみては?」
「でもこの子、話せるんでしょうか?」
「「「…………………………………………」」」

 ───その時
 辺りを見回していた幼女がふるふると震え始め、

「……………………………や」

 何かを呟いた。

「「「ん??」」」

 何だ?と聞き耳を立てる一同。
 だが、そのせいで、



「やったーーーーーですーーーーっ!!」
「「「!?!?」」」

 幼女の突然の叫びにビクゥ!と身体を振るわせることとなった。



「刀に生まれ落ち、いや打たれ落ちて早九世紀と余年、よもや人の器を得るという祈願が叶う日が来ようとは思わなんだです!」

 溢れ出る歓喜からなのかぴょんぴょんと跳ね回ったり、

「これで人様が食している物も食べ放題です。ウププ………」

 口を押さえてニヤけたりしている。
 やがて、

「他にもあんな事やこんな事を………はっ!?」

 こちらの方を見て硬直する幼女。ようやくこちらの存在に気づいたようだ。すぐに正座状態になって姿勢を正し、こちらに向き直る。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ないです!私、刀匠・三条サンジョウ 宗近ムネチカに打たれし刀剣、黒刀・逆薙サカナギと申しますです」

 刀相手に自己紹介されてしまった。

「ふ、ふつつかものですが、今後ともよろしくお願いしますです、主様!」
「ややこしいからその言い方止めろ…………あるじさま?」

 おまけにヘンな呼ばれ方である。

「あるじさま、ってなんだ?」
「?あるじさまは主様です」

 何を今更、という顔をされてしまった。だがその目はバッチリと洋斗の顔をとらえている。やはり俺のことを言っているらしい───と洋斗は腹をくくった上で、とりあえず頼みごとをしてみる。

「その『主様』ってのどうにか出来ないか?なんかむず痒いんだけど」
「そう言われましても………………では、『ご主人サマ』?」
「却下」
「うーんと、『殿下』?」
「却下」
「……………『あなた』?」
「却下だ」
「………………………………『ダーリン』?」
「…………………………………もういいよ、主様で」

 とりあえず、俺の呼称は決まった。だがここで洋斗は気づく。



 自分が、『全裸』の『幼女』に『正座』をさせ、その上『ダーリン』とまで言わせていることに。
 ………………もう、犯罪臭しかしない。



「と、とりあえず着れそうな服探すか」





 ~~~~~~~~~~~~~~~





「なるほど、これが『ユカタ』というヤツです?」

 今、幼女が着ているのは子供用の浴衣である。近所の商店街にあったもので、夏のシーズンに売れ残ったものが店頭に安く並んでいたのだ。

「えっと、逆薙さん、着心地はどうですか?」

 ユリアが着付け、様子をうかがう。

「ふんふん、悪くないです。むしろ良いです!」

 これは浴衣の裾が膝上までしかないタイプのもので、色は紺色である。なので浴衣からすらっと伸びる健康的な二本の足がなお一層白く見えた。
 逆薙は大きな鏡の前でくるりと一回転する。それに合わせて浴衣の袖が翻って舞った。

「ですが、『逆薙さん』という呼ばれ方は気に食わんのです!他人行儀なのです!」
「うーん、それなら…………………『ナギちゃん』なんてどうでしょうか?」
「『ナギ』…………………………~~~~~~~っ!!」

 ユリアが咄嗟につけた名前を一人呟いて、表情がパーッと明るくなる、黒刀・逆薙改めナギちゃん。どうやら気に入ったらしい。

「ユリア」
「はい?」
「また居候が増えそうなんだけど…………」
「ふふっ。叔父様に相談してみますね!」

 その要求が通らないはずもなく、ユリアの邸宅に居候が一人増えることとなった。



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