Brand New WorldS ~二つの世界を繋いだ男~

ふろすと

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第2章 饗宴編

3 vs 1&1&1

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 ー芦屋ー

 現在、
 芦屋、松原、ケリー  
 vs
 三川三兄弟
 の戦いが繰り広げられている。
 能力による攻撃、防御の応酬が続いているが、意外にも三川三兄弟が三人を圧倒していた。

「ッ!!こ奴ら、ひねくれた仁義に反して見かけによらずなかなかの手練れだ………」
「うむ、攻め立てる隙がない」
「………………………」
 (この三人、正直言って1人1人なら大したことはないけど、コンビネーションがしっかりしてる。僕達はさっき出来たばかりの即席チームだから太刀打ちできない!)

 三兄弟はぐるぐる回りながら芦屋たちを囲い込み、蒼、黄が遠方からの攻撃で一点に集まるよう誘導して、一番攻撃力のある紅が一点への集中砲火を放ってくる。そこで散らばった芦屋たちを蒼と黄が追撃する。
 このパターンが続いているのだ。芦屋はこのことには気づいているが、『3 vs 1&1&1』では対応しきれない。しかも、これまで見た限り楓とケリーはどちらも近距離タイプのようで、遠距離から攻めてくる三兄弟相手ではとてもやりづらそうだった。

 (この状況を打破するには…………………手を打たないと)

 追い詰められて三人が背中合わせになったところを見計らって芦屋がシェル状に全方位を守るシェルターを作る。
 作戦を練るための時間を稼ぐためだ。

「「「?」」」

 三兄弟は不思議に思いながらも能力でシェルターを攻撃する。シェルターは徐々に壊れ始める。

「………ちっ、面倒だ!一気に破壊する!」
「「おう!!」」
 そういって三人同時に構えたときだった。

 突然シェルターが音を立てて崩れ、地面に帰った。
 その中では、ケリーが地面に向かって能力付きの拳撃を放つところだった。

「「「な………!?」」」

 ドゴォン! と
 派手な爆音をたてて地面が爆発し、大きく粉塵が巻き上がる。
 そして、その粉塵がによってさらに広がり、三人を囲んでいた三川三兄弟をも巻き込んでいく。

「く、くそ!」
「前が………見えない!」
「どこだ、兄弟達!?」

 現在、粉塵によって三兄弟達の視界は周囲10mほどまで狭まっていた。よって三人ものバラバラの人間を囲い込む大きさの円上にいた三兄弟は互いにコンタクトがとれなくなってしまう。

 ───つまり
 粉塵の中でなら1対1の戦いが可能である。

 言うまでもなく、芦屋達三人も同じように粉塵の中なので視界は悪いのだが、芦屋はともかく楓とケリーは近距離タイプなので10mほど見えていればほとんど問題なく戦える。


 楓は、刀に圧縮空気をまとわせて切れ味を底上げさせている。当たった相手は氷を使っていることから蒼であると伺える。

「はぁっ!」

 蒼が防御のために作った氷の壁を容赦なく真っ二つに叩き切る。蒼は距離をわずかでも離そうとバックステップで逃げる。

「くそっ!」
「く、待たぬか!」

 次々と生み出される氷塊を叩き斬りながら相手を追いつめていく。


 ケリーは、洋斗と同じように雷の能力を体にまとって戦う。ただ洋斗と違うのは、主にスピードに重点を置いて強化している洋斗に対して、パワーを最大限に強化しているのだ。
 ケリーは拳を振り回しながら、さながら戦車のように迫っていく。
 相手は紅、相手が相手なのでとてもやりづらそうにじわじわと後ろに押し下げられる。

「互いに拳をあわせて戦うことこそ戦における仁義と言うものだ。逃げていないで戦おうではないか!」
「くそ!俺が言うのも何だが、コイツ暑苦しいッ!」


 消去法で残りは黄と芦屋だが、この二人も例外なく先ほどの二組とはまた別の場所で戦っていた。芦屋は基本的に遠距離タイプなので戦いづらそうにしているのだが、それは黄に関しても同じなので、芦屋もお互いにうっすらしか見えてない状態に甘んじて戦っている。
 互いに照準がうまく定まらずに大雑把な攻撃で戦っているわけだが、芦屋は地面から棒状のものを伸ばして鞭のように攻撃しているため、雷撃を飛ばすという直線的な攻撃に比べて範囲が広い。さらに直線的な攻撃であるため、自分の正面のみに注意していれば当たる確率はさらに下がる。こう言ったこともあって芦屋は有利に場を進めていた。

「ぬぐ………」
 (これで大分追いつめたはず………そろそろかな?)



 蒼は、楓に追われながら後ずさっていたが、
 その背中に、何かが当たった。

「そ、蒼!?」
「その声は、紅か!」

 後ろを向かずに声に応える蒼。
 この三兄弟の声帯は音波レベルでほとんど同じ声で一般人には到底判別できるものではないはずなのだが、そんなことは余所においておこう。
 ───さらに

「ぐあァッ!」

 何かがぶつかる音と共に煙の中から転げ出てきたのは………。

「「お、黄!?」」
「!?蒼!紅!!」

 互いを確認したのはわずか数秒、すぐに背中合わせでそれぞれの追撃に備える。
 が、一向にその攻撃が来ることはない。ザ………、と粉塵が渦を巻く音だけが耳をくすぐった。

「「「………………………?」」」

 それに混じり。

『やっと一ヶ所に固まってくれたね?』

 とこからともなく、安心に満ちた声が響いた。

「む、」その声は」芦屋か!?」

 まだ煙の中に紛れているのか、声の発生源は見て取ることが出来ない。
 現在の状況を振り返り、三兄弟は気付かされた。

 (((いつの間にか立ち位置が入れ替わっている!?)))
「ふふふ………だが」私達を集めてしまったのは」誤算だったな!」

 三兄弟は高らかに叫ぶ。その声色の裏には焦りを隠すような大仰さが見え隠れしていた。

「また」私達の」連携で───

『残念だけど………これでチェックだよ』


 その声とともに足下の地面が地鳴りを始めたと思うと、三兄弟の全方位が土壁に覆われて、完全に逃げ道を塞がれてしまった。

「!?」」」

 そして、まだ日が射し込んでいた三兄弟の周りが不意に暗くなる。それにつられて上空を仰ぐと、そこには二人の、たなびくポニーテールと岩のような体の影が逆光となって落ちてくる。

「これで………」


「「「終わりだ!!!」」」


 二人の周りには、これまでは比べ物にならない程の能力をまとった雰囲気に溢れていた。今に最大級の能力を放とうとしているという事は自明。だがどこかに逃げようにも周囲は土壁、上には二人、どこにも逃げ場はない。これが狙いだったと気づいたところで最早手遅れだった。

「あ、」ああ」………!」

 楓は地盤ごと斬らんばかりの、視界が歪むほど高密度な極大刃。
 ケリーは三兄弟を囲う土壁の円周一杯の大きさに圧縮された雷球。
 人間相手に放ってはいけないレベルの威力を蓄えた一撃が、逃げ場のない三兄弟の頭上から迫る。

「「「う………」」」



「「「うわああぁぁァアァァ!!??」」」



 攻撃は、叫びによる抵抗も虚しく直撃し、土壁が内側から爆散した。先ほどとは比べものにならない粉塵と爆風が巻き上がる。
 しばらくして粉塵が晴れるが、そこには隕石の落下を疑うほどのクレーターがあるだけだった。三兄弟はダメージ過多で強制退室したのだろう。

「勝った………」

 芦屋は思わず地面にへたり込む。安堵で腰の力が抜けてしまったようだ。芦屋の心は安堵と達成感でいっぱいだった。

「芦屋殿」

 ───楓が声をかけてくるまでは。

 (そうだった!まだこの二人が………!?)
 反射で身構えてしまう芦屋。
 たが、芦屋の焦りに対して楓とケリーは小さく笑みをこぼすのみ、そこに闘志の類は見られなかった。

「汝のおかげでこの戦いに勝利することが出来た。感謝する」
「うむ、お前の戦術は実に仁義に溢れていた」
「………え?あ、いや………」
「話を変えてこれは提案なのだが、私はここで一度手を引こうと考えている。一度共に戦った者達だ、すぐに刃を交えるのは気が引ける」
「それには同感だ。わずかな時間とはいえ互いに背中を預けたのだ、そんな者達と戦うというのは私の仁義に反するのでな」

 (………何というか、変なところで律儀だな。まあ僕としてもその方がありがたいけど)

「そうだね、それなら三人で別々の方向に別れよう。それで、もしまた会ったら………」
「その時は………」
「全力で相手をしよう」


 こうして戦いが終わり、三人はそれぞれの方向に歩き出した。

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