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第1章 入門編

抗戦

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 ユリアの願いが届いたわけでもないが、先生達も各自で事態の収束に向けて動き出していた。

 ー一年校舎 能力講習棟ー

 ここは4月に最初の授業を行った場所である。この棟は特別天井が高く作られており、その上とても面積が広い一階建てである。そこに数十人の男と向き合う、一人の教師がいた。

「全く…何もこんなところに乗り込んでくるとは…なかなか無茶なことをしますね…あなた達。命がいくつあっても足りませんよ?」

 教師は一本の長めの刀を持っている。

「あ、何を言ってる?所詮たった一人だろーが」
「…………一応私にもプライドというものはありますので…折角ですから即刻済ませますよ?そこら中に舞った埃を落とさなければならないので」

 教師・佐久間 拳は静かに刀を構えた。


 ー校庭ー

 数十台のトラックの中で、リーダーは無線機を持って静かに立っていた。すると、

「フォッフォッ………これはまた随分と派手にかましてくれおって…………骨が折れるわい」

 そこに杖を突いて歩いてくる老人が一人。その小さな姿を見て侵入者のトップと思しき男は大きく口角を吊り上げた。

「………なんだ?校長先生様が直々においでとは、随分と好待遇じゃねーか」
「本当ならそんな悠長なことは言ってられないんじゃが…………」

 そう言って小さく杖で地面を突いた途端、
 ゴバァッ!!、と。
 轟音を立てて現れた『土で出来た数体の竜』が地面から立ち昇った。そしてトラックに食らいついたまま宙を舞い、真っ二つに噛み千切った。空から降り注ぐ残骸の雨の中を、土の龍が空を踊る下を、腰の曲がった老人かゆっくりと歩く。

「この騒ぎじゃ、折角じゃから手厚く歓迎してやるぞい?」
 その瞳には滲み出る怒りが見え隠れしていた。


 ー総合体育館前ー

 入学時に使用されたドーム状の体育館だが、ここにも男達は進行してきた。だが、そこには4人の生徒が立っていた。

「『会長』ー、来ましたよー!」
「やはりここを護衛しておいて正解でしたね」
「あぁさすがミッちゃん、全くおまえの推測はだいたい当たるな」
「『ミッちゃん』はやめてください」
「…………けど、ここまで来たって事は敵方の進行がこのあたりまで来てるって事だ、おまえ等は他の所へ回れ、ここは俺でやる」
「…………了解」

 生徒達が散らばっていき、残ったのは一人だけになった。

「おいおい、そりゃどーゆーつもりだ?」
「いや、何か一人でも行けそうだったし」
「バカにしてんのか?」
「そうゆうわけじゃねぇよ?ただ言わせてもらうと…………」

 ここで、『会長』の右手にショートソードが

「フォートレスってのは日本語で『砦』って意味なんだ」

 それをゆっくりと構える。

「その『砦』の生徒会長だ、なめてると痛い目見るぜ?」

 フォートレス能力専門高等学校には世界レベルの人材に溢れているが、その網の目をくぐった侵入者達が、生徒達へと襲いかかる。


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