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お付き合い〜ガン宣告〜

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ここから数日意識もしっかりしない、フラフラしながら生活した。
むーちゃんの送り迎えや家事、なんとかこなしていたのかもしれないが、ご飯を食べられなくなった。

癌宣告を聞いてから2日後、買い物へ行った帰り、体がおかしいなと分かった。
スーパーから家まで徒歩5分のはずなのに、なかなか着かない。遠い。
フラフラする。めまいがする。
その場に座り込んでしまった。もう歩けない。過呼吸だ。苦しい。
どうしようもないので母に連絡をした。

母はすぐに来てくれた。
「病院行く?」
母は聞いたが、精神的なものだからいいと断った。
母に支えられ、なんとか家まで着いた。

着くなりすぐに布団に倒れこんだ。
寒い。
この日は30度近くあったはずなのにとにかく寒かった。
「体が冷たい!」母も触って驚いた。
厚手の長袖に羽毛ぶとんを被って横になった。
母があったかいお茶をくれたが、ブルブル震え、過呼吸、吐き気もありトイレへ走り込んだ。
それでも家事をしようと焦る私に「いいから寝てなさい」と母は叱った。

娘のこと、家のことを母に任せ、私はとにかく落ち着くまで休んだ。
過呼吸は昔からたまにあったので、紙袋を使って対処した。
呼吸が落ち着いてくるとだいぶ楽になった。

とりあえず動けるレベルになったところでスマホを確認した。

ツインくんから「大丈夫?」と何通か入っていた。
スーパーからの帰りに「フラフラする。家が遠い」と送っていたのを思い出した。
そこから私からの連絡が途絶えたので心配したようだ。

状態を話すと心配して電話してきた。
「大丈夫かよ」

「ツインくんに比べたら何でもない」

「そーゆー問題じゃないの。ごめんね。何でも言ってほしい」

「なんか、入籍するとか引っ越すとか全部分かんなくなっちゃったじゃん。それがむーちゃんに悪いって思う。保育園の先生や友達にも話しちゃってたし。子どもを振り回しちゃったって。」

亡くなった旦那はむーちゃんが0歳の時に躁鬱病を発症した。そこから5回引っ越したり、私が旦那に付きっきりでむーちゃんに我慢させてしまったこと、パパが亡くなったこと。全て親の事情で振り回してしまっている。
今回もまた期待させただけで結局振り回してしまった。
子どもに申し訳ないという気持ちが強く出ていた。

「ごめん」
ツインくんが悪い訳じゃないのに謝る。

「でもそれを言うことでツインくんを責めてるみたいになってしまうから辛い」


「いや、俺が癌にならなきゃ良ければよかった話だから当然だよ。それよりも吐き出してくれた方が俺は楽。むーちゃんの為にもあやはさんが笑っててくれた方がいいから」

この人は前から常識と少しズレている。
いつでも私とむーちゃんを中心に考える。
辛いし、こわいはずなのに。

「ツインくんだってなりたくてなったわけじゃないのに。なんかまた1人になっちゃうのかなとか不安になったり、癌について色々調べちゃったり。」

「俺、治ると思ってるから。とゆーか、俺1人なら死んでもいいやって思ってたと思う。今は支えてくれるあやはさんとむーちゃんがいるから逆に絶対死ねない。そう思える人に出会えただけで幸せなんだよね」

「あなたすごいよ、この状況でそんなこと言えるなんて。でも良かった、そう思ってくれて。出会った頃のツインくんは誰も信じてないし、自分なんてどうでもいいって思ってたでしょ。それをなんとかしたいと思った。今は私達のこと信じてくれる。すごく嬉しい。」

「こんだけ色々あって、いつも支えてくれる。感謝しかないよ」

「ねー知ってる?私たち出会ってまだ半年だよ?」

「もう25年分くらいの出来事あったね!笑」

そう言って笑った。
どんなに辛くても笑わせてくれる。
ツインくんも元気なかったり落ち込んでも私と連絡とれば元気もらえると言ってくれる。

「あやはさん、体心配だからちゃんと病院言ってね」

「はは、誰に言われてるんだろ!笑」

胃の痛みや吐き気、めまいが気になったので言われた通り次の日ちゃんと病院に行った。
胃腸炎だと言われた。
薬をもらって様子を見ることにした。

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