図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜

yolu

文字の大きさ
上 下
41 / 61

第四十一話 木曜日 夕の刻 ・肆 〜明日に備えて

しおりを挟む
 今日の夕飯はチキン&マカロニグラタンとニンジンサラダ、玉子スープだった。
 気温があがりはじめた最近だけど、それでもあったかい食べ物は心のなかもあったかくしてくれる気がする。

 夕飯をおえるととすぐにぼくは部屋にこもった。
 印を結ぶ練習だ。
 それなりに様にはなったけど、様になった程度。
 きっとあの呪いが襲ってくるなか、結ばないといけない……

「これに霊力こめる……? むりじゃない?」

 やっぱり2個目の印がスムーズにいかない。

「ピアノでもやってたらよかったかなぁ」

 机の上には冴鬼からわたされたお守りがある。

「冴鬼、だいじょぶだったかな……ぼくもがんばらないとっ!」

 床に沈んでたまりはじめた呪いのカケラを蹴りながら、ぼくはお守りをハンカチに包んで、枕の下にいれる。もうこれだけで体が軽くなる気分だ。

「今日はフツーの夢がみたいな」

 ぼくは今度はベッドに寝転がり、印を結ぶ。
 あまりに真剣にやりすぎたみたい。
 指が痛い……

「みなくても印の形はつくれるようになったから、成長したかな」

 ぼくは黒い霧で充満しているだろう兄の壁をみる。

「明日には呪いをとくからね、兄ちゃん」

 ぼくは声にだす。
 昔からだけど、声にだすと、スッとそこにいくための道ができる気がして。
 だから大事なときはしっかり声にだすようにしてる。
 これで呪いに勝てるわけじゃない。
 勝つために動くことができると、ぼくはおもう。
 スマホをみると、橘からだ。

『あたしでもできることあるかな』

 ぼくは「いるだけで心強いよ」って書いたけど、消した。
 きっと橘はそんな言葉じゃなく、具体的なことをやりたいんだ。
 ぼくが悩んでいると、ピコンと文字がはいってきた。

『みつかよすまないがおぬしのねこにたのみたいことがある』

 冴鬼だ。変換のしかたがわかんないんだ。
 もうなにかの呪文に見えてくる。
 ぼくはじっくり読んで、頭のなかで変換した。

(蜜花よ、すまないが、お主の猫に頼みたいことがある)

 橘の猫をとおして、なにをする気だろう?

『わしがしゅうまつあいにいくといいきかせておいてくれたのむ』
(わしが週末に会いにいくと、言い聞かせておいてくれ! 頼む!)

 そっちかよ!
 心でつっこみをいれたとき、すぐに橘から返信が。

『そうじゃなくて、呪い! さきくんはバカなの?』

 スマホの画面から橘の声が聞こえてくる。

『はながつくなのものはたましいをみちびけるとふじがいっている』
(花がつく名の者は、魂を導けると、フジがいっている)

『ぎせいになったねこたち』
(犠牲になった猫たち)

『のろいにもいのってくれ』
(呪いにも祈ってくれ)

 数秒の間をおいてとどく冴鬼のメッセが、ぼくは思いがこめられてて、なんだかあったかくなる。


 呪いにも、祈ってくれ……


 ぼくは頭のなかでつぶやいた。
 そうか。
 呪いもここで迷ってる魂の1つなんだと、ぼくは知る。

「よし、今日はもう寝よう。明日、指が痛くなっても困るし」

 ぼくはみんなにおやすみと伝え、布団へともぐった。
 今日は冴鬼がついてくれているようで、心強く、ゆっくり眠れそうだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

訳あり新聞部の部長が"陽"気すぎる

純鈍
児童書・童話
中学1年生の小森詩歩は夜の小学校(プール)で失踪した弟を探していた。弟の友人は彼が怪異に連れ去られたと言っているのだが、両親は信じてくれない。そのため自分で探すことにするのだが、頼れるのは変わった新聞部の部長、甲斐枝 宗だけだった。彼はいつも大きな顔の何かを憑れていて……。訳あり新聞部の残念なイケメン部長が笑えるくらい陽気すぎて怪異が散る。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

処理中です...