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5話 給食係にしてください! 3
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もう一つの鍋を火にかけ、オリーブ油を注ぐ。
ニンニクも入れ、香りが立ってきたら、野菜類を投入。少し強めでじっくり炒めていく。
ウサギの肉が味付けなしの焼いたもののため、野菜類でコクを補おうという作戦だ。
嬉しいことに3羽とも、とても脂がのっている。炒め野菜でどうにかできるのではと、昔に読んだ料理の本を思い出しつつ、作っていく。
僕はそれを横目に、調味料入れの小袋をあらためて確認することにした。
さっき、見間違いでなければ、カレールーが見えたからだ。
「……やっぱり、あった」
見慣れたカレールーの他にも、鶏ガラスープの素、コンソメ、和風ダシ、醤油、みりん、味噌をはじめ、塩、胡椒、一味、七味などなど、知ってる調味料がわんさかでてくる。
地面に調味料を並べる僕を挟んで、エレナが並んだ。
なぜ、この子はこれほど気さくに僕の横にきちゃうんだろう……!
少しだけ肩をすぼめて、スペースを空ける努力をする。
「それ、カレーっていうんでしょ?」
まさか、この文字が読めるとは……!
驚きと嬉しさが入り混じってうまく話せない。
「私たちね、そっちの世界のもの、文字とか読めるんだけど、でも、それが何かはわからないの。調味料だってことまではわかってるんだけどね」
「そ、そそそそうなんだね」
近い。震える。怖い。震える。近い。
より肩をすぼめて並べた調味料を見つつ、これだけあれば、作れないものはない、と言ってもいいだろう。
「……あ、あの、僕、ちょっと思ったんだけど、僕の世界と時間の基準がいっしょだったり、野菜の見た目も似てるし。ウサギは二足歩行してたけど、共通なものが多い気がして」
「こっちとそっちの世界が繋がりやすいのもそのせいなのかしらね?」
くすくすと笑うエレナの横顔に少し見惚れてしまうが、鍋から蒸気があふれている。
出汁用のスープだ。
火加減をさらに弱火にしようともたもたしていると、エレナが調整してくれた。
「魔力、タクトにもあるのかな?」
「あったらいいなぁ」
「きっとあるわよ」
エレナの声は不思議と説得力がある。
僕は取り柄なんてないし、料理ぐらいしか人の役に立てるものはないのに。
優しい子だな。
僕は少しだけその優しさに浸った。
祖母の葬儀の時も、みんなが優しかったのを思い出す。
出汁スープから骨を取り除き、炒めた野菜を鍋へ入れることにした。
木でできたレードルでスープを混ぜると、少し濁ってしまったが、野菜の旨みがスープにとけている。そんな気がする。
一度味見をし、塩を足して様子をみる。
旨みもあり、野菜の甘み、炒めたときの香ばしさがプラスされ、とてもポテンシャルの高いスープができている。
「……鼻歌、上手ね。そっちの歌なの?」
顔が燃えた。
熱い。
熱い!
つい、いつもの癖がでてしまった!!
めっちゃ恥ずかしい……!!!!
「ね、タクト、私の吟遊詩人になってよ。この世界だとね、最強の後衛になれる役職なの。私も目指してたんだよ」
僕は曖昧に頷きながらも、この世界には魔法剣士と勇者、吟遊詩人がいることがわかった。
そして、僕にでもなれるジョブとして、吟遊詩人があるという。
歌う職業、憧れの職業だ。
「……ふぁぁあ、タクト、もうできるかー?」
むっくりとルースが起き上がった。
猫耳はしぼんでいるが、良い匂いがたっているのか、空気をすんすんと嗅いでいる。
僕はほぐして横に置いておいた肉を鍋に入れ、ひと混ぜし、味見をひと口。
こしょうを少々足して、うなづく。
「……よし。食べよう」
大きめのどんぶりのようなスープカップに出来立てのスープを注いでいく────
ニンニクも入れ、香りが立ってきたら、野菜類を投入。少し強めでじっくり炒めていく。
ウサギの肉が味付けなしの焼いたもののため、野菜類でコクを補おうという作戦だ。
嬉しいことに3羽とも、とても脂がのっている。炒め野菜でどうにかできるのではと、昔に読んだ料理の本を思い出しつつ、作っていく。
僕はそれを横目に、調味料入れの小袋をあらためて確認することにした。
さっき、見間違いでなければ、カレールーが見えたからだ。
「……やっぱり、あった」
見慣れたカレールーの他にも、鶏ガラスープの素、コンソメ、和風ダシ、醤油、みりん、味噌をはじめ、塩、胡椒、一味、七味などなど、知ってる調味料がわんさかでてくる。
地面に調味料を並べる僕を挟んで、エレナが並んだ。
なぜ、この子はこれほど気さくに僕の横にきちゃうんだろう……!
少しだけ肩をすぼめて、スペースを空ける努力をする。
「それ、カレーっていうんでしょ?」
まさか、この文字が読めるとは……!
驚きと嬉しさが入り混じってうまく話せない。
「私たちね、そっちの世界のもの、文字とか読めるんだけど、でも、それが何かはわからないの。調味料だってことまではわかってるんだけどね」
「そ、そそそそうなんだね」
近い。震える。怖い。震える。近い。
より肩をすぼめて並べた調味料を見つつ、これだけあれば、作れないものはない、と言ってもいいだろう。
「……あ、あの、僕、ちょっと思ったんだけど、僕の世界と時間の基準がいっしょだったり、野菜の見た目も似てるし。ウサギは二足歩行してたけど、共通なものが多い気がして」
「こっちとそっちの世界が繋がりやすいのもそのせいなのかしらね?」
くすくすと笑うエレナの横顔に少し見惚れてしまうが、鍋から蒸気があふれている。
出汁用のスープだ。
火加減をさらに弱火にしようともたもたしていると、エレナが調整してくれた。
「魔力、タクトにもあるのかな?」
「あったらいいなぁ」
「きっとあるわよ」
エレナの声は不思議と説得力がある。
僕は取り柄なんてないし、料理ぐらいしか人の役に立てるものはないのに。
優しい子だな。
僕は少しだけその優しさに浸った。
祖母の葬儀の時も、みんなが優しかったのを思い出す。
出汁スープから骨を取り除き、炒めた野菜を鍋へ入れることにした。
木でできたレードルでスープを混ぜると、少し濁ってしまったが、野菜の旨みがスープにとけている。そんな気がする。
一度味見をし、塩を足して様子をみる。
旨みもあり、野菜の甘み、炒めたときの香ばしさがプラスされ、とてもポテンシャルの高いスープができている。
「……鼻歌、上手ね。そっちの歌なの?」
顔が燃えた。
熱い。
熱い!
つい、いつもの癖がでてしまった!!
めっちゃ恥ずかしい……!!!!
「ね、タクト、私の吟遊詩人になってよ。この世界だとね、最強の後衛になれる役職なの。私も目指してたんだよ」
僕は曖昧に頷きながらも、この世界には魔法剣士と勇者、吟遊詩人がいることがわかった。
そして、僕にでもなれるジョブとして、吟遊詩人があるという。
歌う職業、憧れの職業だ。
「……ふぁぁあ、タクト、もうできるかー?」
むっくりとルースが起き上がった。
猫耳はしぼんでいるが、良い匂いがたっているのか、空気をすんすんと嗅いでいる。
僕はほぐして横に置いておいた肉を鍋に入れ、ひと混ぜし、味見をひと口。
こしょうを少々足して、うなづく。
「……よし。食べよう」
大きめのどんぶりのようなスープカップに出来立てのスープを注いでいく────
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