老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜

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第30話 みんなで朝ごはん

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 朝ごはんは、野菜たっぷりのスープと、昨日の残りのパンとなったわけだが、朝食の食べっぷりに莉子は驚いていた。

「莉子さん、おかわりしてもいいですか?」

 一番最初に立ち上がったのはアキラだ。
 すぐにトゥーマもよそい、ケレヴまで……。

「スープ、足りますかね……」
「大丈夫だ。ちゃんと寸胴に作り替えておいた」

 莉子は二度見した。
 当初は2リッターも入れば、というくらいの鍋だったはずだが、今見れば、4リッターは軽く作ってあったようだ。
 材料が追加されていたのはわかっていたが、しっかり先読みできているイウォールに頭が上がらない。

「イウォールさん、ありがとうございます……読みが甘かったです」
「いいえ。私たちは大柄だからか、食が細いように見えても、よく食べるんだ。そうだな、日本の1食分は少し物足りなかったりもする」
「なるほど。では、エルフさん用には多めにした方が」
「それは、だめだぞ、リコ」

 横から声をかけてきたのはトゥーマだ。

「エルフだけ別料金となるのもできないだろ? じゃ、サービスで増やす、それじゃ、店に負担がかかる。そこは気にしない方がいい」
「そうでしょうか……」
「外国人が来たからって量を変えたりしないだろ?」
「たしかに……」

 莉子は大きく頷くものの、どうしたらと首を傾げるが、アキラがそこに付け足した。

「リコさん、ここのお店に負担がかからないやり方で、おもてなしを増やしましょう。僕たちは1ヶ月しかいないですし、それ以降はリコさん一人になってしまいますし」
「それもそうですね……今のスタンスは崩さずに、少しでも快適になるようにしないといけませんね」

 二杯目のスープを頬張るイウォールは、そのやり取りを聞きながら小さく頷いている。

 食事を終え、作業に取り掛かろうとしたとき、カフェのドアが叩かれた。
 莉子が慌ててドアを開けながら視線を回すが、見当たらない……。

「……え?」
「どこ見てるんだよ、リコ。こっち!」

 声は下から届くので、視線を下ろすと、そこには大きなカバンをそれぞれ持ったネコ型少年・ジェイとミーたちがいた。

「仕立ても終えたし、届けに来たよ」
「食器もな! たく、イウォールは人遣い荒いよなー」

 それぞれに喋りながら、カフェの店内へと入っていく。
 小さな後ろ姿をみながら、どうも異世界の人たちは、マイペースのような気がしてならない莉子がいる。
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