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第2章 カフェから巡る四季
第147話 このチューブワサビ、めっちゃ辛いんですけど……
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ランチに出したローストビーフにあまりが出た。
莉子はそれを自分の夜食用にとっておいた。
「久しぶりのローストビーフー!」
鼻歌交じりで用意するのは、自家製ローストビーフ丼用のソースである。
バルサミコ酢、醤油、ワサビでソースを作ると決めると、部屋の食品棚に顔をつっこんだ。
ワサビはスーパーのチューブワサビになる。
ただ初めてみたパッケージのワサビだったため、莉子はるんるんで購入を決めたのだが……
「このワサビ、どんな味だろ……」
チューブワサビにも、『生わさび』『本わさび』と表記がちがうものが多い。
『生』であれば、国内外産かかわらず、生のワサビをすりおろしている、という意味になるそう。
逆に、『本』がついていると、西洋わさびは入っていない。という意味になるらしいが、原材料が『国産』という意味ではないという。
また、『本わさび』と書かれていても、本ワサビ使用だと、50%以上がワサビを使っていて、本ワサビ入りだと、50%以下で入っている。という意味になるらしく、正直、何が一番いいのかはわからない。
が、莉子が個人的に好きなのは、「カメヤ 本わさび」である。
チューブの硬さもほどよく、辛味の他に甘みも感じられるため、ドレッシングにしても使いやすく、お刺身につけても素材が引き立つ気がする、というのが理由だ。
ちなみに今回購入したものは「本ワサビ使用」。割合がわからないが、使用ということは西洋わさびが多めなのかもしれない。
とわいえ、ワサビだ。
どんなものでも、それほど変わらないだろう。
というのが、莉子の結論である。
少し、指につけてなめてみる。
量を決めるためだ。
「………いた! から!!!!」
ワサビを三度見するほどに、辛い! むしろ痛い!!!!
「こんなワサビ、久しぶりに食べたんだけど……辛っ!」
莉子はひとりブーブーいいながらも、今日のローストビーフ丼に変更はないため、量を調整して使うことにしたが、それにしても鼻が痛い。辛すぎる!
莉子は明日来る三井に対し、このワサビを消費できないか考えながら、莉子は眠りについた。
「──で、辛いワサビを消費するために、今日、ポークソテーなわけか」
とんかつ用の豚ロースにまんべんなく塗られているのは昨日の辛い辛いワサビだ。
「で、俺の鼻をつーんとさせて、楽しいのか」
「ちがいますって。これで焼くと、肉がほんのり柔らかくて、いい感じになるんですよ。味付けもこれだけ」
今日は三井ひとりでの来店だ。
連藤は出張中。そして、三井の彼女の星川も出張中。
そのため夕飯は莉子のカフェで星川からお願いされていた。
『莉子ちゃん、あまり物でいいから、食べさせて。お金は三井くんに請求して』
というメールが莉子のもとに届いている。
なので、「あまりもの」で作成したのが、ワサビポークソテーだ。
本当にただ豚肉にワサビを塗って、テフロン加工のフライパンで焼いていくだけ。
ワサビが途中焦げ付くが、それをこすりつけるように肉を揺らすのがポイントだ。
しっかり肉にいい色のワサビがついて、こんがりと焼けてくる。
これは牛肉でもできる。お肉も生姜焼き用の厚さでも問題ない。ただその場合はワサビは薄めに塗るのがいい。
厚めのお肉にはたっぷりと。理由としては、ソースのように食べれるからだ。
とはいえ、元はとても辛いワサビだ。
「俺、ワサビ、得意じゃねーんだけど」
「罰ゲームじゃないんで。召し上がれ」
きのこの味噌汁と、ワサビポークソテー、ほどほどのご飯と小さめのサラダ、お昼に余ったきんぴらごぼうをトレイにのせて差し出した。
適当に切られたポークソテーを三井は悲しそうな目で摘み上げる。
「焼けてはいるけどよ……」
「ちゃんと料理してるって」
「ただの罰ゲームなら、高いワイン、出してもらうからな」
「はいはい。任せて。アメリカのいいやつ出すよ」
「約束だからな!」
三井はワインの約束をとりつけると、その勢いのまま肉を頬張った。
顔はしわしわになっている。
ツーンとぬけるワサビを耐えるためだ。
左手にはコップの水を握ったが、固まる。
口はもぐもぐと動き続けている。
「……あれ」
そう、辛くないのだ。
唐辛子は火を通すほど辛味が増すが、ワサビは火を入れるほど辛味が落ちる。
いいワサビなら甘みが増すことすらある。
「………あ、でも少し、ピリッとするが……アクセント程度だな」
うまいぞ。呟きつつ、ご飯を頬張りはじめる。
「でしょ? ちゃんと辛いワサビも大量消費できるんですよー」
「それ、塗って、すぐ焼くだけ?」
「そ。漬けておくとかしなくて平気。そのまま塗ってジューって焼けばいいの。意外と美味しいでしょ?」
「なんか肉やわくなってる気すらする」
しっかりと味わいつつ食べ進めたとき、どんと三井の横に腰をおろしたのは巧だ。
「三井、ちゃんと定食食ってるか? 野菜食ってるか見ろって星川さんから………うわぁ……ワサビ、これ? 緑の? えぇえええ」
ドン引きの巧がいるが、三井はそれに唇を釣り上げた。
「巧、食ってみろ。飛ぶぞ?」
「辛くて?」
「違うって。莉子、巧にも同じの」
「わかりました。まだあるので大丈夫です」
あるという言葉に巧の腰が引き気味だ。
「あるのって、ワサビが、だよね……オレ、今日は白ワインが飲みたくてきたんだけど!」
「なら、このワサビソテー合うので、おつまみに出しますね」
「やだーーーーーー!!!!!」
巧の拒否も虚しく、10分もしないでワサビポークソテーが出される。
ひと口含んだ巧の顔は、鳩が豆鉄砲を食らったよりも酷かった。
すぐに、三井によって仲間たちへ拡散されたのだが、その報復はまた別の話で。
莉子はそれを自分の夜食用にとっておいた。
「久しぶりのローストビーフー!」
鼻歌交じりで用意するのは、自家製ローストビーフ丼用のソースである。
バルサミコ酢、醤油、ワサビでソースを作ると決めると、部屋の食品棚に顔をつっこんだ。
ワサビはスーパーのチューブワサビになる。
ただ初めてみたパッケージのワサビだったため、莉子はるんるんで購入を決めたのだが……
「このワサビ、どんな味だろ……」
チューブワサビにも、『生わさび』『本わさび』と表記がちがうものが多い。
『生』であれば、国内外産かかわらず、生のワサビをすりおろしている、という意味になるそう。
逆に、『本』がついていると、西洋わさびは入っていない。という意味になるらしいが、原材料が『国産』という意味ではないという。
また、『本わさび』と書かれていても、本ワサビ使用だと、50%以上がワサビを使っていて、本ワサビ入りだと、50%以下で入っている。という意味になるらしく、正直、何が一番いいのかはわからない。
が、莉子が個人的に好きなのは、「カメヤ 本わさび」である。
チューブの硬さもほどよく、辛味の他に甘みも感じられるため、ドレッシングにしても使いやすく、お刺身につけても素材が引き立つ気がする、というのが理由だ。
ちなみに今回購入したものは「本ワサビ使用」。割合がわからないが、使用ということは西洋わさびが多めなのかもしれない。
とわいえ、ワサビだ。
どんなものでも、それほど変わらないだろう。
というのが、莉子の結論である。
少し、指につけてなめてみる。
量を決めるためだ。
「………いた! から!!!!」
ワサビを三度見するほどに、辛い! むしろ痛い!!!!
「こんなワサビ、久しぶりに食べたんだけど……辛っ!」
莉子はひとりブーブーいいながらも、今日のローストビーフ丼に変更はないため、量を調整して使うことにしたが、それにしても鼻が痛い。辛すぎる!
莉子は明日来る三井に対し、このワサビを消費できないか考えながら、莉子は眠りについた。
「──で、辛いワサビを消費するために、今日、ポークソテーなわけか」
とんかつ用の豚ロースにまんべんなく塗られているのは昨日の辛い辛いワサビだ。
「で、俺の鼻をつーんとさせて、楽しいのか」
「ちがいますって。これで焼くと、肉がほんのり柔らかくて、いい感じになるんですよ。味付けもこれだけ」
今日は三井ひとりでの来店だ。
連藤は出張中。そして、三井の彼女の星川も出張中。
そのため夕飯は莉子のカフェで星川からお願いされていた。
『莉子ちゃん、あまり物でいいから、食べさせて。お金は三井くんに請求して』
というメールが莉子のもとに届いている。
なので、「あまりもの」で作成したのが、ワサビポークソテーだ。
本当にただ豚肉にワサビを塗って、テフロン加工のフライパンで焼いていくだけ。
ワサビが途中焦げ付くが、それをこすりつけるように肉を揺らすのがポイントだ。
しっかり肉にいい色のワサビがついて、こんがりと焼けてくる。
これは牛肉でもできる。お肉も生姜焼き用の厚さでも問題ない。ただその場合はワサビは薄めに塗るのがいい。
厚めのお肉にはたっぷりと。理由としては、ソースのように食べれるからだ。
とはいえ、元はとても辛いワサビだ。
「俺、ワサビ、得意じゃねーんだけど」
「罰ゲームじゃないんで。召し上がれ」
きのこの味噌汁と、ワサビポークソテー、ほどほどのご飯と小さめのサラダ、お昼に余ったきんぴらごぼうをトレイにのせて差し出した。
適当に切られたポークソテーを三井は悲しそうな目で摘み上げる。
「焼けてはいるけどよ……」
「ちゃんと料理してるって」
「ただの罰ゲームなら、高いワイン、出してもらうからな」
「はいはい。任せて。アメリカのいいやつ出すよ」
「約束だからな!」
三井はワインの約束をとりつけると、その勢いのまま肉を頬張った。
顔はしわしわになっている。
ツーンとぬけるワサビを耐えるためだ。
左手にはコップの水を握ったが、固まる。
口はもぐもぐと動き続けている。
「……あれ」
そう、辛くないのだ。
唐辛子は火を通すほど辛味が増すが、ワサビは火を入れるほど辛味が落ちる。
いいワサビなら甘みが増すことすらある。
「………あ、でも少し、ピリッとするが……アクセント程度だな」
うまいぞ。呟きつつ、ご飯を頬張りはじめる。
「でしょ? ちゃんと辛いワサビも大量消費できるんですよー」
「それ、塗って、すぐ焼くだけ?」
「そ。漬けておくとかしなくて平気。そのまま塗ってジューって焼けばいいの。意外と美味しいでしょ?」
「なんか肉やわくなってる気すらする」
しっかりと味わいつつ食べ進めたとき、どんと三井の横に腰をおろしたのは巧だ。
「三井、ちゃんと定食食ってるか? 野菜食ってるか見ろって星川さんから………うわぁ……ワサビ、これ? 緑の? えぇえええ」
ドン引きの巧がいるが、三井はそれに唇を釣り上げた。
「巧、食ってみろ。飛ぶぞ?」
「辛くて?」
「違うって。莉子、巧にも同じの」
「わかりました。まだあるので大丈夫です」
あるという言葉に巧の腰が引き気味だ。
「あるのって、ワサビが、だよね……オレ、今日は白ワインが飲みたくてきたんだけど!」
「なら、このワサビソテー合うので、おつまみに出しますね」
「やだーーーーーー!!!!!」
巧の拒否も虚しく、10分もしないでワサビポークソテーが出される。
ひと口含んだ巧の顔は、鳩が豆鉄砲を食らったよりも酷かった。
すぐに、三井によって仲間たちへ拡散されたのだが、その報復はまた別の話で。
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